かたほうだけのパンプス
敦子



 眠れぬ夜のために

アンダーグランドの映画館で観た映画。

誰とも共有できなかった。いつもひとり事だった。

映画の面白さはない。ストーリーだってそんな面白くない!

ただアンダーグランドという世界観の嗅覚のある人だけが重宝がるそんな映画ばかり観ていた。

誰も良さなんてわかってくれないんだ。

しばらくして出来た彼氏はずっと年上で、私を飽きさせない人。

当時、巨大スクリーンのあるフロワーの音楽がガンガン飽和するなかでカクテルを飲み、カットされた果物を頬張った目の先にアンダーグランドの映画館で観た映画が巨大スクリーンで映されていた。

わー、私、この映画見たのー。彼はよく理解してなかった。

私はアンダーグランドな映画観る人なんだってことをわかってほしかった。

そういうコなんだっていうことを。




これは、私が21歳くらいのときの話。

男の人と付き合いたいのは私の価値をわかってくれる人。

ということがあった。

今も同じなのだ。

値段ではなく、珍しい、そのへんにはない価値とわかってほしいという思い。


2022年09月07日(水)
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