悩みは人生を充実させる/文集「人生の時」

2014年02月20日(木) 7、夜明け 8、生涯

七、夜明け

  鋭き高峰に
  月は懸かりて
  空と地を峻別する
  空に星 地には影
  何をもよせつけぬ
  きびしさありて
  すべてを拒絶する

  星くずの散らばった空に
  悲歌は流れ
  清冽な冬の星を見つめながら
  私は清らかなこころを持ち
  一人 独覚の静けさを保つ

  やがて 茜さす夜明けに
  西の空の星星は
  輝きを失い
  今 明け方の空に
  星はひとつづつ
  消えてゆく

八、生涯

1、春はあゆみきて
  肌を匂わした
  青樹(せいじゅ)の湿った香り
  咲いた花のはなやかさ

2、やがて春は去り
  暗雲の日ざしが陰(かげ)り

3、やがて夏がきて
  鬱蒼(うっそう)と茂った森林の上に
  荒天(こうてん)が訪(おとず)れる

4、秋になり
  蝕(むしば)んだ回想が廻(めぐ)って
  冬に
  瞑想(めいそう)のしずかさを満たそう

5、空を切る鳥がながれてゆく
  海の果てにしずみゆく落日
  老いたるひとは
  知己の人から
  忘れ去られようとしている

6、紫雲を割りて
  陽(ひ)は注ぎ
  風とともに
  影はながれる

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