一、春
春花に頬を寄せるほど 僕らは幸せでありたいものだ 向こうから春風がやってきて 春草の首をかしげるときには にっこりとうなづくほど おおらかでありたいものだ 雑草さえも毎年ちいさな花をつけて 僕らの心をほほえませる 小さな昆虫が花の中で眠っているときは 花をゆらして 何だかいたずらもしてみたくなる
二、春愁(しゅんしゅう)
春花(はるはな)の群れに頬を埋めたなら 花蜜の匂いは遠い幻想と憂愁とをはらんだ 眠っているのではないのだけれど 眠っているような 春女(はるおんな)に抱かれているような 青草の緑を体に照りかえしながら 花粉をほおばらせ きのうの悲しみを忘れているような あたたかな幻の日ざしと春草の匂い
三、爪草
爪草の花を噛んではいけない 春はやさしい君らにだけ しあわせを教えます やさしげな少女の匂い ほおずりした時のあたたかみ 不思議な眠るような言葉で教えます
爪草の茎を折ってはいけない 春はさびしい君らにだけ しあわせを教えます 少女の恋心と花蜜の色と、 眠るような言葉でそっと教えてください
四、春風
青空の晴れわたった日の喜びを 私はなぜ歌うのでしょう 光が飛びはねて 妙にしあわせであるような そんな明るい時になる あなたは日ざしの中で眠ってしまいました そんなあなたを見守って ずっとやさしい歌をうたってあげよう
青空の晴れわたった日の喜びを 私はなぜ歌うのでしょう 緑がひどくやさしくて 誰からか愛されているような そんなしあわせな時がくる あなたは日ざしの中で眠っています 春風が林の幹を抜って しずかに僕らをつつんでいます
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