VITA HOMOSEXUALIS
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九州の私のアパートは職場のすぐ近くにあった。
外回りの作業でない日は田んぼの中を歩いて数分で職場に着いた。かなり残業して帰っても遅い時刻にはなっていない。近くの居酒屋兼大衆食堂で夕飯を済ませて帰ってくると、その後は退屈だ。
アパートには布団を敷きっぱなしにして小さな机の置いてある「リビング」と称する部屋が一つ。この部屋の床は柔らかい素材で、爪を立てるだけで傷がついた。
その隣に小さな流し台とガスコンロのある台所。その向かいにトイレ。いちおう便座の温かいシャワートイレだった。トイレの向かいが小さな風呂。冬場はかなり冷える。熱い風呂に入ったと思っても、入っているうつに冷えてくる。
博多の恋人とは連絡が取れなくなった。おカネを出せば男が抱ける店は熊本にあり、そこの浅黒い彼氏とも一回かぎりの付き合いではなかったが、たびたび通えるほどのおカネがあるわけもない。熊本にはまた多目的浴場というか、ハッテン場もあるという噂だったが、今さらそこで新しい男との出会いを求めようとも思わなかった。
一日置きくらいにオナニーした。だがそれも退屈になってしまった。昔、長野県に住んでいた頃は、雪の舞い荒れる夜道を職場から帰り、まずガスコンロに火をつけて部屋を温め、それから石油ファンヒーターの温風を全開にし、ようやく体が温まったところでシャワーを浴び、酒を飲み、遠くのゲイ友のメールを読み、自分もメールを送り、そうこうするうちに下半身が疼いて、布団の中、それは分厚い毛布の中だったが、全裸でそれに包まり、手を使うのではなく、体全体を動かしてオナニーした。そのオナニーは激しく、いつもガマン汁がヌルヌルと出て、毛布を少し濡らした・・・
その頃にくらべるとあっさりしたオナニーだった。勃起する時間も短く、勃起力も落ちているように思えた。
ペニスをいじっていると陰毛に白髪を発見した。自分は髪の毛は禿げたり白髪になったりせず、黒いままであったが、陰毛の方に栄養とエネルギーが足りてないのだった。
枯燥剤を撒いた庭のようにひよひよとした白髪の陰毛はみっともなかった。だから私はそれを電動ひげそりのキワゾリを出して剃ってしまった。剃るときに刃で少し皮膚を傷つけた。
私は昔のことを思い出し、あのときどうやってメル友を探したのだが、もう覚えていなかったが、そういうサイトを検索した。
そういう経験をしたことのある人なら誰でも知っている通り、最初は詐欺まがいのサイトにひっかかった。登録した途端に20通ものメールが来たのだ。だが、それを読もうとすると「ポイント」の購入が必要だった。
ようやく私は無料のサイトを見つけた。しかしそこには高齢の人が多かった。その中に三十代前半の青年を見つけた。あまりどぎついことも書いてなかったので、とりあえず返信してみた。そしてしばらくそのことは忘れた。
だがある日、私のメールスロットに見知らぬ人からのメッセージが届いた。 あの掲示板サイトの青年だった。 私は短い自己紹介を書いて返信を出した。
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