僕らが旅に出る理由
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2008年10月09日(木) 予言の果て

ななこから久しぶりにメールがあって、会おうよ、と書いてあった。
一応返事はしたけど、実はあまり会いたくない。どうしよう。

ななこは大学時代の友達で、その時はほんとに仲が良かった。
ただ仲が良かっただけじゃなく、とても特別な友達、という雰囲気を醸し出していた。
社会人になってからも、そこそこ会っていた。
連絡がほぼ途切れたのは、私がロンドンに行ってからだ。
同じころ彼女も付き合っていた人と結婚したので、お互いを取り巻く環境がいろいろ変わってしまった。

忙しくなったのだろう、私の日記も(この時の日記はまさにこのエンピツで書いてた!)彼女は読まなくなった。私の精神状態はその後どんどん下降して行ったのだけど、日記を読んでない彼女は、それを知らなかった。

それが分かったので、私も彼女に自分のプライベートをあまり話さなくなった。彼女からは出産したという短い連絡が来て、しかも生まれた子供に相当入れ込んでいた。彼女くらいに子供に思い入れる親は別に珍しくないのだが、ただ大学時代の彼女からは想像もできないことだったので、違和感を感じた。

大学時代の彼女は、自分のタイミングで生きている人だった。
約束のドタキャンもよくあったし、電話をして伝言を残しても2回に1回は折り返してこなかった。携帯もメールもない時代、そんな状態でよく続いたなと思うけど、私は彼女と話していれば飽きなかったし、ほかの人とではありえないほどよく笑った。その感覚が忘れられず、私は電話をかけ続け、メッセージを残し続けた。

あまりに連絡が取れないことに業を煮やしてある時彼女に文句を言うと、
「でも私、あなたとは、20年経っても30年経っても今と同じような気持ちで会えると思うよ。それってすごくない?」
とピントはずれな返事をされた。ちょっと呆れたが、その予言めいた言葉は私の心を捉えた。私たちが「特別な友達」であることの裏書きのように感じたのだ。その時は。

果たしてあれから15年は経過した計算になるが、ななこの気持ちは確かに変わってないのかも知れない。
私は変わったようだ。
もう彼女に会いたいという気持ちが起こらない。
今となっては彼女といた時の楽しさより、理由もなく待ち合わせに2時間も遅れたり、一緒に行こうと約束していた海外旅行を1週間前になって彼女がキャンセルしてきて、泣きそうになりながら一人で飛行機に乗ったりしたことばかりが思い出されて、あんな思いはもうしたくないと思ってしまう。

じゃあ会わなきゃいいというようなものなのだが、私はきっと、かつての友達からの誘いをこんな風に避けるのが果たして正当であるのか、にこだわっているんだと思う。
でも、正当であるかどうかなんて、たぶんどうでもいいことなのだ。

予言なんてそう滅多に当たらない。
そのくらいのことは分かるようになった。


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