舌の色はピンク
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2021年08月16日(月) 加算的取り組みしか見えない人たち

小雨。
傘をさすほどじゃない。
朝から肌寒い。
秋、こんにちは。


弁当はビビンパ。
混ぜればできるレトルトの。
冷凍ご飯をレンジで温めてから
少量のサラダ油で炒めて、製品のパック具材と混ぜる。
これが1食分らしいのに
2人分の米と混ぜているから味が薄くなるかもしれない。
と思って目玉焼きを焼いた。
ごま油熱して卵落として火を止めてから半開きの蓋して放置。
塩コショウ。
ばっちし味付けキマッた。
濃くもなく薄くもなくでもほんのちょっとだけ薄く、
そのほんのちょっとのところに
スパイスやコチュジャンの辛味甘味が陣取って
もんくなく美味かったぜ…。


ネット社会においてのコロナ禍では
一億総批評家化。
政策への批判が入り乱れるが
その中で
「政府は何もしてない」
という意見は多く聞く。
「国民にお願いするばかりで」
「ワクチン頼りで」
といった声とともにあり、
なんと浅薄なんだろうとびっくりする。
こいつらのせいで、
庇いたくもない政府を庇うかのような意見をすることになる…。
まずこの手合いは、自分が見聞きできる範囲内でしか事態を捉えていない。
メディアが伝えてくれる(全体から見れば一部の)情報のなかで、
さらに自分がたまたま見聞きした限りにおいて、事態のシルエットを定める。
また、加算的な取り組みでないとそこに意味を見いだせない。
「〜をする努力」と同じように
「〜をしない努力」「〜をさせない努力」といった取り組みはたしかにあるのに、
後者は断然前者に比べれば表面化しにくい。
これ、個人レベルでもありふれてる。
食べないダイエットは地味で地道で退屈で辛い、
一方で◯◯ダイエットと称して
いかにも能動的な取り組みにしてみせることで
物事を表層的に撫でることに馴染んだ消費者勢を取り込めるというわけで、
当然ダイエットに限らず
あらゆるところに
あらゆるかたちで
こんな魔の手が潜んでいる。
少なくない人々がその思考法に慣れ親しんでいて、
能動性、積極性、進歩性、成長性といった観念による束縛に負けてる。

ていうかモノスゴク単純に
「ワクチン確保のための外交戦術」とか考えないんだろうか。
誰も教えてくれなくてもちょっと考えればそれって
していないわけはない、くらいはわかると思うのだけど。

ついでに…
近代経済学では、経済主体(つまり消費者だ)を、
合理的で賢明な判断のできる人たちとして扱うそうだ。
なるほどだ。
これ、政策でも似たようなものなのだろう。
世の中には非合理的で非理知的で
とても賢明とはいえない行動をとっていく人が少なからずいるが、
その存在はなかなか前提にされない。
それはコロナ禍でとことんあらわになった。
皮肉なのは、現実の政策に対して
「いや、こうするべきだ」と
改善された代替案を出しているつもりの市井の意見のほとんどが、
全国民を
「合理的で賢明な選択のできる常識人」と見なしている点だ。
それも、合理性の基準も賢明の基準も常識の基準も
自分自身を軸としているから、実はとても狭い枠組みでしかない。
それは彼らの生活圏では、9割以上の人間に該当するのかもしれない。
しかし現実には、ろくに判断の働かない老人もいる。
ドキュンと蔑まれるようなアウトサイダーすれすれの人々もいる。
引きこもりもいる。
服役中の社会逸脱者もいればホームレスもいる。
あらゆる「例外者」は、しかし国民というくくりにおいては例外ではない。
自分の目に触れないからってそういう人たちを無視するなよな。
そういう世界になって誰より厳しい立場に追い込まれるのはお前だ。
と思えよ。



退勤後、駅構内の連絡通路で、
ただ漫然と通路を直進する僕に対し
前方からいかつめの男が
歩きスマホで階段を下ってくる一幕があった。
階段には「のぼる」と「くだる」の向きが示されていて
左側通行が推奨されているのだが、
男は「のぼる」側から…彼にとって右手側から下ってきている。
僕はお行儀よく通路の左手側を歩いていたから、
つまり二人のどちらかが避けなければならない。
絶対に避けたくねーと思ってそのまま直進するも、
とろとろスマホをいじってる彼は気づきもしない。
いよいよ目の前というところまで迫って、僕は立ち止まった。
ようやく彼も目線を上げ、
目が合うとすんなり進路を譲り、去っていった。
…という一連の流れを、先輩に見られていた。
「絶対に俺はどかないっていう強い意志を感じた、
最後は避けるのかなって思ったら
立ち止まるからビックリした」
幼稚なところを見られたと恥ずかしかったが
イヤア格好良かったと先輩は笑っていた。

先輩は昨日が誕生日だったから一言簡便に祝い、
それから互いに誕生日の思い出を語った。
おおよそ誕生日は
「祝われなければならない」
「いい日でないといけない」
というお膳立てがあるぶん、ブルーな事態を招きやすい。
僕の方はいろいろあるが、19歳の誕生日が思い出深い。
映画館でバイトをしていた当時、
周りは今でいう陽キャ大学生が多く、
年中飲み会を催していた。
その中にあって筆頭ともいえる遊び好きの先輩Aが、
僕の誕生日を祝う飲み会を企画してくれた。
ただ先輩Aはやや身勝手でイタイところもあり、
内心こころよく思っていない人は多かった。
それでも僕としっかり仲良くしていた先輩Bがいてくれたから
まぁまぁ楽しめるだろうというつもりでいた。
当日、バイト仲間のシフトの都合上、
会は僕と先輩A、Bの三人で始まった。
1時間ほど遅れて皆がゾロゾロやってくる予定だったのだが、
それを待っている間に、先輩AとBが口争いし始めた。
理由は忘れたがかなり些細なことだった、
僕をめぐっての何かだった気がする。
口論は次第に熱を帯びて、
いよいよ手が出るかというところまでいった。
きまずさのあまり黙っていた僕も
これは流石にいかんとふるい立ち
なんとか場をとりなしたものの
Bは怒って店を出ていってしまった。
「ちょっと追ってきます」
と言い残し僕はBを追って、
そのまま店の前で彼の話を聞いた。
何なんだよなアイツ、と憤るBを
そうですねえ、そうですねえ、と僕はなだめて、
おおよそ20分ほどかけて機嫌を直してもらった。
「ごめんな。お前の誕生日なのに、雰囲気悪くして。
俺も大人気なかった。こっからは楽しもう」
「いやあ、全然。いいんですよ」
ところが待ち構えていたのは怒りのあまり震えているAだった。
「なあ、おかしくない? オレ一人でほっとかれて。
一人だから席も立てねえし。
お前らがどこ行って、いつ帰ってくるのかもわかんねえし。
電話かけても出ねえしよ。
なあ、おい、お前の誕生日祝うっつってさあ、
オレが、お前の誕生日祝うっつってさあ、
店用意してさ、
それでオレが一人でほっとかれるって、なんなの?
なんかおかしくない?
おかしいと思わないの?」
逐一ごもっともだった。
何よりいたたまれない。
なんて悲しいことだろうと心が痛み、
わりと心からスイマセンでしたと謝ったのだが、
Aの怒りは収まらず、机の下で僕の足を蹴った。
ここでBがまた熱を吹いた。
「いいじゃないですか別に。
こいつの誕生日会なんでしょ。
こいつが楽しむのが一番でしょ。
ちょっと待たされたくらいでなんなんすか?
それで雰囲気悪くして、台無しじゃないすか。
あぁ、あぁ、スイマセンシタ。
悪かった、悪かったですよ。
もうそれでよくないすか?
もうやめましょうよ」
こちらはこちらで正しいように思えた。
しかし僕は立場上、なんとも言えない。
いや、今だったらいくらでも取りなせるのだが、
未熟だった当時はなにを言ったらいいか当惑するばかりだった。
AはAで、
自分が理性的で良識のある人物だという自己認識が強いものだから、
「こいつは何も悪くないけど」
と今度は急に僕への態度を改めて、
むしろこの後輩の最大の理解者はオレだといわんばかりの
演説をふるって、Bを攻撃し出した。
僕は早くこの場を去りたかったが、
ちょうど遅れてきたバイト仲間が集まって、
険悪な空気は一度払われ、仕切り直しとなった。
Aが笑い話の調子で一連の顛末を皆に語り、
皆はBをたしなめながらも直前までの剣呑さを察知して
どうにか明るい場にしようと試みたが、
結局Bは帰ってしまった。
その際僕にはこの場に居残るよう強く言い含めていたから
やむなくその後もガンバッたのだが
つらい会だった。
雰囲気を変えたいAが
事前に用意してきたプレゼントを取り出して
それがまた
当時流行ってた小川直也のフレーズがプリントされたTシャツという
めちゃくちゃ面白くないアイテムで
しかしこれをトイレで来てこいという。
ただでさえつまらないのに
まだぎこちない雰囲気が尾を引いていたせいもあり
案の定だだすべりした。
陽キャたちの
(でもせっかくの誕生日なんだから明るいほうへもってかないと)
(こいつをすべらすわけにはいかない)
(的確なコメントで笑いになるはずだ)
(だれか上手いこと言え、そしたら俺がつないでいく)
といった高度な思惑が錯綜している
思考線みたいなものが透けて見えた。
そして結局全員押し黙るというすべりかたに決着した。
最悪な誕生日だった。


夜はこれもまた出来合いのメンチカツコロッケ。
昨日のあまりの中華くらげ、カクテキ。
いつものサラダ。
月曜夜は一週間のうちで
最も手間のかからないようにしたいのだ。
なんとはなしに見ていたグレーテルのかまど、
今回は阿美さんの台湾カステラという、
台湾でカステラ屋を個人的に営んでいる
阿美さんという方のそれを作っていた。
もう由来はどっからでもいいんだな…。
しかし台湾の市場で
せっせとカステラを作り売っていく光景はよかった。
生きてる!という感じで。


れどれ |MAIL