「あなたがたに新しい戒めを与えましょう。あなたがたは互いに愛し合いなさい。わたしがあなたがたを愛したように、そのように、あなたがたも互いに愛し合いなさい。」 ヨハネ13:34
「愛し合う」
本章からは、イエス様の十字架の前日、つまり木曜の最後の晩餐の時の会話や出来事が記されています。そしてこの13章には、イエス様の究極の愛のひとつの形が示されています。それは、これから自分を裏切るユダ、ペテロなど、弟子たちの足を洗うという出来事です。 パレスチナ地方は乾燥しており、ホコリっぽい、赤茶けた大地が広がっています。そこを素足でサンダルのようなものを履いてみんな歩いていたわけですから、その足はとても汚れていました。そしてその弟子たちの足を、神であるイエス様御自身が洗われました。召使がするようなことを、神であるお方が率先してなさったのです。しかも、数時間後には自分を裏切る者たちの足を・・・。本章の1節には、この弟子たちを最後まで愛し抜かれたと記されていますが、それを具体的に示したのがこの出来事でした。 阪神淡路大震災の後、被災地を政治家たちが訪れました。私がテレビを見ていると、そこには当時の首相が、ヘルメットをかぶり、作業服を着て、安全靴を履いて、体育館に避難している方々のところへ入っていく姿が映し出されていました。避難所とはいえ、そこは生活をしている場です。しかし当時の首相は、正に土足でそこに入り、あたりを歩き回って終わりました。数日後、天皇陛下ご夫妻が同じような体育館にお見舞いをなさっている姿が放映されました。その姿は、首相の時のそれとは全く違っていました。ご夫妻で普段着を来て、体育間に入る時は靴を脱いで、一人一人のところで膝を折ってかがみ、手をとりながらお話をなさっていました。訪問を受けた人々は、感動のあまり涙を流していました。天皇陛下が靴を脱いで、一人一人の目線で話をしてくれたということが嬉しかったということでした。数日前の首相の姿とはあまりに対照的だったため、私はこの二つの映像を強烈に覚えています。 イエス様は、神であるのに、私たちと同じ世界へと降りて来られました。しかも、同じ目線に立っただけでなく、裏切り者の下にまでくだってくださったお方です。その愛は、私たちにも示されました。神を神としない私たちのために、十字架で命を投げ出してくださったのです。このお方の愛を受け止めた者は、その愛を実践する生き方へと変えられることでしょう。
ペニンスラ・フリーメソジスト教会 牧師 榊原宣行
|