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 お婿にいった四+カカのお話
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  月読 後日談


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 ぎむれっと前日譚


   ぎむれっと-40話 -キリリク話
  かっこいいカカシと、
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2007年07月17日(火)
香る珈琲、そして恋〜だーてぃ・まざー 3)


不安げな彼女に向かって、ボクは頷いて見せた。
ほんとうなら、忍の痕跡は徹底的に排除しなくてはならないのだけど。
子どものころの先輩を、偏見や先入観なしにアカデミーの同級生として記憶してくれているひとがいる、というのは、悪いことではないように思えた。
そんなボクを、忍として甘いと言うひともいるだろう。自分でも、そう思う。
そもそも見知らぬ相手から招かれるまま部屋を訪れ、出されたものを口にする、ということが、無用心なのだ。
だが、まぁ、毒には耐性もあるし、そうでない毒は口にする前にわかる。
無味無臭の毒、というのもあるにはあるが……虎穴に入らずんば、虎子を得ず、とも言うのだから、向こうが何かたくらんでいるのだとしたら、乗ってみるのも手なのだ。
今のところ、そういう裏は感じられない。ほんとうに懐かしくて、としか思えなかった。
「じゃあ、大事にしまっとくよ」
そう言ったものの彼女は写真を手にしたまま、しばらく見つめ、それからようやく手文庫にしまう。
「ねえ、あにさん……あの九尾の日、はたけカカシは里の外に出ていたのかねぇ」
あやうく「え?」と返しそうになったボクのヘマは、彼女が目を伏せ、カップの渕を指でなぞっていたことでバレずにすんだ。
「ああ、やっぱり、そうだったんだねぇ」
彼女はボクが知っていると思ったのだろう、そう呟いたが、ボクにはなんのことやらサッパリだ。

あの日――先輩がどこで何をしていたか。
一度たりとも、聞いたことはない。
あの日のことだけは、ボクにとっては触れてはいけない先輩の深淵になっている。

あの前後のこと、たとえば四代目が火影に就任したときのことなどは、よく話に聞いている。
火影代替わり時に、暗部は全員、任を解かれる。三代目から四代目に代替わりしたときも同様だが、半分近くが抜けたり解任された割りに、新入りは少なかったそうだ。
そして先輩は、四代目の火影就任と同時に暗部入りした数少ないメンバーのひとりで、厳密に言えば四代目火影の暗部唯一の生存者。これは長く暗部にいる者なら、みな知っている。
三代目が再び火影の座についたとき、代替わりの際に抜けた者たちの多くが再び暗部配属となった。
そして先輩も、そこに加わった。
そうなってみて改めて顔ぶれを見ると、残っていたのはほとんどが若手だったそうだ。
「まるで」と、先輩は言った。「あの事件を予見してでもいたみたいだった」と。
「だから先生は若手の任を解いたのかもしれないって、思った」
四代目火影の暗部は、最初から共に散ることを決められていたのかもしれない。先輩以外は。
そしてそのことは、三代目も知らされていなかったらしい、と先輩は言っていた。
実際四代目は、三代目に「若造の火影には、ベテランが必要なんです」と言ったそうだ。
「いずれ、火影としてのキャリアを積んだら、若手には戻ってきてもらいますよ」
そう笑って言った言葉を、三代目もそのまま受け取りはしなかっただろうが、座を譲った以上、口を挟むことではないと思ったのかもしれない。
「オレはね、先生に無理言って無理言って、散々断られて、それでも無理言って断られて、それでも無理言って、最後は泣き落として暗部に入れてもらったの」
ただ一度だけ聞いた独白めいた言葉は、夜の闇に溶けて消えそうなほど、小さな声だったのを思い出す。

あの日――先輩は、里の外に出ていたのか?

先輩だけが生き残ったことからも、四代目が何らかの手を打ったのだろうと思うことはあった。
が、里の外に出ていたとは思ったこともなかった。
もちろん、任務で里外に出ていた忍はいた。
そのなかには、九尾と対峙した忍たちが最後の力を振り絞って放った式に応じて戻ってきて防衛線となり、その結果、散った者も多い。任務によっては戻れなかった者もいるが、そのなかに先輩は入っていない。

ボクはといえば修行中、つまり下忍未満だった。
そんなボクでも、あの夜の禍々しくも圧倒的な力に満ちた独特の空気は、はっきりと覚えている。
夜なのに、夕焼けのように燃え盛る朱に空は覆われていた。
綺麗だとも、不気味だとも思わなかった。そんな当たり前の感覚を麻痺させる、次元を超えたエネルギーの坩堝に巻き込まれ、自分が無くなってしまいそうだった。
さならが、魂を抜かれた抜け殻のように、ボクは呆然と空を見ていた。
その中心に向かって、マントと面を着けた暗部が空を飛んでいく。
逃げ惑う一般人を、離れていても飛んでくる火の粉から守りながら誘導する正規部隊の忍たちもいた。
無力な己に歯噛みすることさえできなかった。それほど、彼我の差は圧倒的だったのだ。

「里が襲われた翌々日だったかな?」
彼女の言葉に、追憶から引き戻される。
「難民が流れてこないところを見ると、無事、火影の封印術は成功したのだろうって話を聞いたんだ」
「難民? ああ、木の葉の里からの?」
「そう。忍は戦闘に参加するだろうけれど、里には一般人もいるだろう? そういう人たちは、里が壊滅したら難民になるしかないじゃないか」
確かに言われる通りだ。
「叔父さんの珈琲屋ってのは、けっこう火の国のお偉いさんが一服しに来る店で、そのひとたちが話しているのを、聞いたんだ、あたしは」
ああ、このひとはたまたまお使いで里を離れていて、災を逃れたと言っていた。里の状況がわかりはしないかと、神経を張り巡らせていたはずだ。
「そのときに、未曾有の災厄を予測したうえで、ちゃんと里や国のことを考えて、国主に宛てた密書を寄越すとは、若くてもやはり火影と言われるだけのことはある、って、そんな話をしていた」
「ああ、密書……ね」
「もちろん伝書の鳥か、ほかの動物を使ったのかもしれないけれど、あの九尾のさなかだろう?」
「九尾の妖気にやられて口寄せができなかったり、たとえ口寄せ出来ても使役する動物たちが弱っていた、という話はたくさんありましたからね」
彼女は頷いた。
「だろう? 里や国の命運を左右するぐらい大切な文書なんだ。人間に持たせるのが一番、確実なんじゃないかな、ってあたしは思ったんだ。だったら、はたけカカシしかいないだろうって」

もし、あの日、密書が国主のもとに届けられたのが事実なら。
その役を担うのは、先輩しかいない。
里から火の国の中枢までは、およそ1日半。四代目は九尾に里が襲われる直前に、書を託したことになる。
九尾が里を襲ってからでは、遅い。先輩も、絶対に里を、いや四代目の傍らを離れはしなかっただろうから。
だがその前なら。
不穏な気配はあっても、いや、だからこそ、それに関わる大事な書だと言われれば、先輩は命に従っただろう。
いや、むしろ先輩が里を離れるとしたら、そのタイミングでしかありえない。
「ああいう大きな事件のとき……暗部は火影と命を共にするもんだろ? もちろん全滅するってのは、そうそうあることじゃないけど。でもあのあと、四代目の暗部は全滅したらしい、って噂が流れたから、他国の依頼を受けた忍の襲撃を、火の国では警戒していたんだ。でも、少し遅れて、一番の使い手は残ってる、って噂が流れてきた」
彼女は、真剣な眼差しで写真の入った手文庫を見た。
「一番の使い手が残っているぐらいだから、木の葉の里を甘く見ないほうがいい、ほかにも隠し玉になるような手練が温存されているって、火の国のほうから噂を流してやって、お陰で安泰だったんだよねぇ」
もしかしたら、そのことも密書には示唆されていたのかもしれない。
精鋭揃いの四代目火影の暗部随一の使い手、という駒は、他里に対して、充分な牽制になる。
たしかに、たった一人では難しいだろうが、それが残っているぐらいだから、他にも、と考えるのは、自然の流れだ。
「あたしねぇ、なんでかそのとき、それはきっと、はたけカカシだって、思ったんだよねぇ」
やはり、この女性は特別な感受性を備えているようだ。ただ、あくまでも自覚なく、だ。
「最近、あたしみたいな一般人も“写輪眼のカカシ”なんて二つ名を耳にすることがあって、ああ、やっぱり生きてたんだって思ったらさ」
なんの前触れもなく、彼女の頬から顎に伝った涙が、テーブルに落ちる。
「なんかさ、ああ、生きてたんだって……思ってさ……」

あの日の自分について決して語らぬ先輩が、一度だけ言ったことがある。
「暗部はみんな、逝った。オレだけが残った」
淡々と、いつものあまり感情の窺えない口調で、そう言っていた。
先輩にとってそれは、共に散ることの敵わなかった無念の記憶なのだとその時は思った。
でも、違ったのかもしれない。
先輩は、四代目から託されたのだ。託されたことを知って、先輩は逝くわけにはいかなくなった。
そして、残った先輩が他里からの攻撃の抑止力として働くと知れば、里の上部も先輩が残ったことを受け入れる。

そういうことか、とボクは思った。

忍としての器も、その大きさも何もかもが異なっているけれど。ただ、一点、四代目と共通点があるとしたら、それは先輩への思いの深さだ。
火影を務めるような方の心を、ボクごときがわかろうはずもないが、先輩への思いだけは、変わらない。いや、変わらない、と信じたい。
だからボクは確信する。四代目は、先輩に生き延びてほしかったのだ。
もっと生きて、人生の喜びはもちろん、哀しみも苦しみも、知ってほしかったのだ。
幼いころから忍になるべく育てられてきたような先輩に、ひととしての生を、泣いたり笑ったりしながらじたばたと生きる、そんな人生を歩んでほしい、きっとそう願ったのだ。
忍の世界では、まっとうな感情や感受性を殺したほうが楽なことは多い。
戦闘の只中にあって、自分はひとではなく殺人マシンだとでも思ったほうが楽なことは多々ある。ボクも、その誘惑にかられることもしばしばだ。
だからこそ、わかる。四代目は夢を、先輩に託した。
初代さまが、ただ権力者に使役されるだけの忍から脱却しようとして里を興したのと同じように、四代目もまた目指したのだ。
ひととして豊かな感情を備えていることと、忍として優秀であることは両立するのだ、と。
忍は、ある意味では駒。しかし、ただ他人の指先に従うだけの駒ではなく、意志や感情をもった駒なのだと。
そこに忍のアイデンティティがあると。

だから、先輩は、先輩なのだ。
その卓越した能力故、殺人マシンのように見えることがたとえあったとしても、決してひとであることを捨てない。
四代目がいたから。託されたから……だから、今の先輩がある。
敬愛よりも、もしかしたらもっと強い、妄信にも似た激しく深い思いを寄せていた師の、その心を受け取って。