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 お婿にいった四+カカのお話
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 【Epilogue】 そして、恋

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  月読-5話 -キリリク話-
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  月読 後日談


  テキーラサンライズ−19話
 ぎむれっと前日譚


   ぎむれっと-40話 -キリリク話
  かっこいいカカシと、
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 ※途中、18禁あり
  プロローグ  本編  エピローグ



  La recommandation
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-ヤマカカな話-

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2007年04月17日(火)
春霞 2


ほんとうは……不安だった。
暗部を離れたオレと暗部のテンゾウとの接点は、今までに比べると圧倒的に少なくなる。
何年も、それこそテンゾウが暗部配属となってほとんどすぐぐらいのときから一緒だった。
恋人同士になったのは、1年ぐらいたってからだ。それからずっと身近にいた。
後に、あいつは分隊長になって、オレの隊を離れたけれど。それでも、一緒だった。

でも、もしかしたら、たまたま身近にいて、都合のいい相手だから続いていただけかもしれない。
接点が少なくなったら、自然消滅するのではないか。
そもそもテンゾウは、情事の相手をさほど必要とはしていない。
まったく不要というわけでもないのだろうが、自発的に求めるほどの必要性を、彼はもっていない。
ここ数年はオレの相手をしていたから、オレがテンゾウを求めるのに応えてオレを抱いてはいたけれど。
オレと離れれば、そんな機会が頻繁に必要というわけでもない。
“溜まる”という感覚が皆無ではないらしいのだが、かなり曖昧な様子だった。
そんな状態でも、相手の情動に触発されないと明確な欲求は感じないのだとも言っていた。
そういえば、付き合い始めた最初のころも、こんなふうにもどかしい気持ちになったのを思い出す。
結局、あのころからオレは少しも変わっていないということなのだろうか。

「先輩?」
怪訝そうな声でテンゾウがオレを呼ぶ。
そうだ、それでもテンゾウは来てくれたじゃないか。それも長期任務がおわって、すぐ。
「ええと……先にシャワー、浴びますか?」
その言葉に、身内が火照る。何を前提として言われた言葉なのか、深読みしてしまう自分がいまいましい。
「それとも、空腹でしたら何かつくりましょうか?」
オレの様子がおかしいというのは、わかったのだろう。気に留めながら、それでも臆することなくテンゾウは言葉を継ぐ。こういうところが彼らしいところだ。
オレの直属の部下だったときも、そうだった。オレの不機嫌に気づき、でも必要以上に引いたりしない、言うべきことは言う。そんなところが、部下として気に入っていた理由のひとつだ。
でも、いま思えば、そんな後輩にいつもオレは甘えていた、ということだ。
「いい。シャワー浴びて、飲みにいく」
「え?」
「もともと、その予定。冷蔵庫カラだから」
あ、と言ったきりテンゾウはきまり悪げな表情になった。
「すみません。先輩も任務直後だったんですね」
今度は、オレが「あ」と言う番だった。そう、そうだった。三ヶ月里を離れていたテンゾウが、正規部隊のオレの任務を把握しているわけがないのだ。その説明を怠ったのはオレだ。
「うん、そう。さっき帰ってきたところ」
「ああ、だから」
とテンゾウはオレの格好を改めて見た。「裸体」という単語はのみ込んだらしい。ほんとうに優秀な後輩だ。
「立ち飲み屋ですか?」
聞かれて、オレはしばしためらった。ここしばらく、あの店には行ってなかったのだ。
迷った末に、「うん」とだけ答えてオレはバスルームに向かった。
シャワーを浴びて出てくると、テンゾウはオレの家に置きっぱなしになっている着替えを引っ張り出したらしく、すでに私服姿だ。
「おまえ、シャワーは?」
いえ、と首を振る。確かに、そう汚れてはいなかったが。
「暗部棟でシャワー浴びましたから」
「でも、ここに来たとき暗部服のままだったよね?」
テンゾウは彼には珍しく悪戯っぽく笑った。
「暗部服のままだと、屋根伝いに移動できますから」
「だから、着替えなかったの?」
「はい」と上機嫌な後輩は、「さ、行きましょう」とオレの手を引く。大胆な行動に、不覚にもドギマギしてしまった。
「いつの間に、そーゆー悪知恵が働くようになったの?」
「先輩の教育の賜物です」
毎度、ソレ? とむくれるオレをテンゾウが笑う。
だいぶ日の長くなった空は、ようやく暮れ始めたところだ。やはり空気は湿り気を含んでいて、暖かいような、肌寒いような、曖昧模糊とした春の宵特有の肌合いだ。
繋いだ手のオレより少し肉厚な感触が、とても心地よい。
窺うようにテンゾウを見ると、彼は真面目な顔で前を見ていたが、握る力がちょっとだけ強くなった。

「らっしゃい……おや、お久しぶり」
立ち飲み屋の女主人はオレを見、テンゾウを見、笑みを深くする。繋いだ手には、チラとも視線が向かわない。でもきっと気づかれているだろう。
オレは照れくささに、店に入るや否やそそくさとカウンターの端を見た。そこに「今日のおすすめ」が書かれた小さな黒板が立てかけられている。
空腹なのに、がっつり食べたいというほどの食欲がわかないのは、やはり精神的に疲れているからだろう。
「んっと。小あじの唐揚げ、桜海老と大根おろし、卵豆腐のソラマメあんかけ……それと、ん〜、燗つけて」
オレが燗つけて、と言うとき、酒はお任せだ。女主人は心得顔で「はいよ」と答え、テンゾウを見る。
「ボク、焼酎ロックにしょうが焼き」
ご飯をつけますか? という言葉は、もう彼女からは出てこない。テンゾウがそれを頼むときは空腹だと知っているから。
「先輩、それだけですか?」
「うん、オレ、最近、ダイエットしてるの。儚げな雰囲気を出そうと思って……」
「はいはい、で、それだけで足りるんですか?」
「ひっど〜い。何その反応?」
「ダイエットしなくても、先輩は儚げですから! たくさん食べてください」
オレの上滑りした冗談に、テンゾウは心持ち疲れた表情で答えてくれた。
ほんとに、かわいい後輩だよね、おまえは。
「……先輩が相変らずで、嬉しいです。冗談も意味不明だし……」
やっぱり、かわいくない。オレだって滑ったという自覚があるのに、追い討ちかけるように。
「はい、桜海老と大根おろし。と、燗酒。銘柄は、春霞」
まるで今日を象徴するような酒の名だと、オレは思った。
「こちらは焼酎ロック」
徳利と猪口をオレの前に、グラスをテンゾウの前に置く。オレが手にした猪口に自然な動作で徳利から酒を注ぐテンゾウを見て、女主人はまた笑みを浮かべる。なんだか、くすぐったくてならない。
「焼むすび、作りましょうか?」
彼女の言葉に、オレが思わず「いいの?」と返すと、彼女は「もちろん」と頷いてくれた。

実は二月ほど前、この店に珍しく若い女性客が3人で来た。なんでもこういう立ち飲み屋が流行りだとか。
そのとき、たまたまオレは焼むすびを食べていた。それを見た女性客が、同じものを注文した。裏メニュー(メニューにない料理をそう呼ぶそうだ)を頼めるのがステータスだとかなんだとか。
その日は、それで終わったのだが、この裏メニューが口コミで広がり、焼きむすび目当ての女性客が増えたところで、オヤジたちが切れた。
焼むすびは、確かにおいしい。でも、焼き物専用店ではないこの店では、手間がかかる。だから、常連のオヤジたちも普段は我慢しているし、オレも滅多に頼まない。
それを彼女たちは遠慮なく、頼む。おいしいからと、追加注文する。若いお嬢さんが店に来ることに関しては、やぶさかではなかったオヤジたちも、さすがにカチンときたらしい。一度、険悪な雰囲気になりかけ、騒動の原因を作ったような形になったオレは、なんとなく肩身が狭くなった。
その後、ガイと組むことが増え、任務後は引きずられるように一緒に飲んで(というか、飲み比べをして)いるか、任務のないときはガイが言うところの“勝負”に付き合っていたこともあり、しばらく足が遠のいていたのだ。
「最近、立ち飲み屋ブームも一段落したみたいですから」
「そうなの?」
「ええ。そんなもんですよ、ブームなんて」
涼しい顔で言って、女主人は厨房に引っ込んだ。
「ボクが知らない間に世間ではブームが始まって、終わっていたんですね」
テンゾウが感慨深げに呟く。
「まあ……そういいう情報も、必要だったら伝わるんだろうけど」
「つくづく……裏家業だなと思います」
テンゾウはらしくもなく、ため息をついた。
「先輩の状況だって、全然把握できていなかったですし」
「全部把握していたら、それストーカーだから」
オレの軽口は苦笑で流された。
そう……そういう問題ではないのだ。テンゾウはテンゾウで、オレとの接点の少なさを実感したのだ。
もしかしたら、テンゾウも不安だったのかもしれない、と思って、いやいや、それはオレの希望だ、と思いなおす。
オレと離れていることを不安に思ってくれるなら、少しはテンゾウの気持ちを推し量ることもできるという、オレの姑息な希望だ。でも、問いただす勇気はなかった。

「お待たせ」
テンゾウのしょうが焼きとご飯が登場する。もやしやキャベツ、青菜などの炒めたのが大量に添えられている。見ただけで腹がふくれそうなオレの前には、卵豆腐と小あじの唐揚げ。唐揚げには、千切りにした野菜を塩もみしたものが添えられていた。
「お好みでこちらをどうぞ」
くし型のレモンと醤油とごま油が一緒に出される。
……見抜かれちゃってるね、と思いながら、オレは頭を下げた。食欲のないオレが、それでも食べやすいようにと、工夫してくれる、その気持ちが嬉しい。けれど、なんだか情けない。
「らっしゃい」
ガラリと戸が開くのに、女主人が答える
「桜も散るって言うのに、夜はまだ、ちょーっと寒いやね」
常連のオヤジのひとりだ。オレとテンゾウを認めて、やあ、と手をあげる。
「久しぶりじゃないか、兄さん。そっちの兄さんも元気だったか?」
テンゾウは、はいと会釈を返す。
「いや、里外に出張だったって聞いてたけど、こっちの兄さんがしょげちゃっててねえ」
あっはっはっ、と笑う親父の首を絞めてやろうかと思う。
「おまけに、若いお嬢さんたちが兄さんに色目使うし。帰ってきてくれてよかったよ」
テンゾウがチラとオレの横顔を窺う。
これ以上何か言ったら絶対締めてやる、と、決意を固めかけたところで、
「ご注文は?」
と、女主人がやんわりと割って入り、オヤジさんの意識はおすすめの書かれた黒板に向いた。
助かったと思う反面、こんなふうに気遣ってもらうようじゃ半人前だとも思う。
「先輩、一般人相手に殺気振りまかないでください」
テンゾウがオレにだけ聞こえる声で言った。
「殺気なんか振りまいてないじゃない」
「振りまく寸前に思えました」
テンゾウの指摘は正しい。オレは落ち込んで、塩もみ野菜にレモンを絞り、口に運んだ。
「先輩が、女性からモテるのはいつものことですから。つまみ食いしないことも、よく知ってます。だから」
そう言って、テンゾウはグラスを傾ける。
いいなぁ、グラスになりたい、などとぼんやりテンゾウの口元を見ながら思う。
思ってから、オレ、何考えてるの? と自分でびっくりした。
「だから、そんな外野の声にピリピリしないでください」
テンゾウの優しい声が、じんわりと胸の底にしみてきた。