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 お婿にいった四+カカのお話
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 ぎむれっと前日譚


   ぎむれっと-40話 -キリリク話
  かっこいいカカシと、
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2007年03月20日(火)
らすてぃ・ねーる 12 最終話


「らっしゃい、あら、お揃いで」
女将さん――そう言うと彼女は、やですよぉ、といつも笑うのだが――の笑顔がボクらを迎えてくれた。
「おう、にいさん」
「コンバンハ」
ヘラっと笑う先輩の右手は、しっかりとボクの左手を握っている。
しかもボクが逃げないように、指まで絡ませて。
どうしちゃったんだろう、このひと、という不安と、手なんて繋ぐの、記憶のなかでは生まれて初めてなんですけど、という戸惑いとがごっちゃになって、ボクはどんな顔をしていいかわからなくなる。

「えっとね、オレ、冷酒ね。と、エイヒレと青菜炒め……」
先輩は、今日のおすすめが書かれた黒板を見る。
「うん、やっぱり煮豆腐。それから……」
先輩が考えている隙に、ボクは「焼酎、オンザロックで。あと、豚肉のしょうが焼き」と注文する。
「ご飯、つけましょうか?」
「お願いします」
「オレ、焼きむすび食べたい」
これはメニューにはない、特別注文品だ。
「はいはい。3個で足りますか?」
女将さんは笑い、先輩も嬉しそうに笑う。

「あー、若造にはやさしいなぁ」
オヤジたちからのブーイングを女将さんは、まぁまぁ、といなす。
「にいさんたちはいくら食べても、すぐにおなかが減る年頃じゃないですか。シンさんは、食べたら食べただけ、お腹が出ちゃうだけなんですから」
「や、こりゃ一本取られたな」
ゲラゲラと笑いが店内に満ちる。

ああ、ここはいい。空気が優しくて、暖かい。

ボクは今回の任務を思い起こした。
後味のいい任務など、ありえないけれど。今回のも、後味は悪かった。
確かに盗賊と化した元軍人たちは、敗走していたこの1年、殺戮や略奪を繰り返してきたけれど、もとはといえば、本国の王族とその一族の独裁に耐えかねて、クーデターを起こしたのだ。
そして娘たちは無事、逃げ延びた村人に返したけれど、彼女たちの身に何もなかったとは、とうてい思えない。
生き延びてよかった、と単純に喜んでばかりもいられないのだ。
そしてあの抜け忍と、身代わりにされた中忍。忍の末路を見るような、あの一幕。
なんの迷いもためらいもなく判断を下し、任務を遂行した先輩にだって、そんなことはわかっている。
そして、自分が任務以上に踏み込んで何かをできるわけではない、ということも身に染みて知っている。
そして先輩は、そういうことを「どうでもいい」と切り捨てない。
ただ、ひっそりと己のうちに抱える。やりきれなさ、理不尽さ、むなしさ、怒り……全部、抱える。
ボクという恋人がいながら、必要とあらば他の男ともためらいもなく肌を重ねる自分に一番傷ついていたのも、きっと先輩なのだ。

ああ、だから。先輩は……そして、ボクも。
この暖かく優しい空気が、恋しかったのだ。
自分もまた人間なのだと、ただの若造に過ぎないのだと、確かめるために。

相変らず先輩とボクは、カウンターの下で手を繋いでいたけれど、オヤジさんたちは気がつかないのか、見てみない振りをしているのか、何も言われなかった。

運ばれてきた青菜炒めを、利き手でない左手で器用に箸を繰りながら、先輩は口に運ぶ。
「やっぱり、野菜だよね」
山盛りの青菜――季節柄、菜の花の仲間だろう――が、見る見る減っていく。
ボクも、箸を伸ばして摘む。ほんのり苦い味は、春を感じさせた。
合間にエイヒレを摘みながら、先輩は冷酒を口に運ぶ。
「はい、しょうが焼きとご飯」
丼に盛られた白米に腹が鳴り、先輩が笑った。
豚肉は脂身のほとんどないモモ肉だ。いつの間にか、しっかり好みを把握されている。
片手を繋いでいるので、多少、食べづらいが、ボクは利き手で箸をもっているのだから、贅沢は言えない。

ひとしきり食べることに専念して一息つくと、先輩がジーパンのポケットから何かをつまみ出した。
「ああ、さっきの犬小屋の」
錆びて崩れかけた釘だった。あのまま庭に捨てず、ポケットにしまったのが先輩らしい。
「捨てようと思って、忘れていた」
そう言って、赤茶けたそれを見る。

「あいつ……ね、ずっと里の外で仕事してたんだ」
あいつというのが、上忍を指しているのはわかった。
「今回のネタを掴んできたのもアイツ。昔から、ほとんど里の外を転々としているタイプでさ」
なるほど、暗部のなかでも戦場ばかりを移動する外回りの部隊にいたのか、とボクは思う。
そして、盗賊の一味に抜け忍が加わっているという情報は、彼がもたらしたものだったのだ。
「じゃ、今回、そのためにわざわざ一度、戻って、それから……?」
「うん。ほとんど、トンボ返り。家族にも合わないまま」
家族がいたのか。妻子なのか、両親兄弟姉妹なのかはわからないが。
「それで、噂にも疎かったんですね」
そう、と先輩は答え、冷酒のグラスを口に運んだ。
彼にとって、先輩は里の象徴だったのかもしれない、とボクは思った。
だから、許せる、ってことではないけれど。

「ね、カクテルって作れる?」
先輩の呼びかけに、女将さんは笑顔を深くする。
「あたしがやっても似合いませんけどね。一応、振れますよ」
シェイカーを振る真似をする。その手つきは、鮮やかだ。
「う〜ん、シェイクするんじゃなくて、ステアで作るカクテルなんだ」
「いいですよ、なんでもござれ」
女将さんが笑顔で答える。
「おいおい、またにいさんが気取ったこと始めたぜ」とオヤジたちが茶々を入れる。
「だから、いつまでたっても、女を見る目がないんだよ」
お決まりのセリフに、先輩がにんまり笑う。
「その代わり、男見る目、ありますから」
「あはは。ちげえねえ」
あっさり流されて、ボクはえっと固まった。
思わず挙動不審になりそうな自分に、落ち着け、落ち着け、と言い聞かせる。
いや、深くは問うまい。こういうことは、問い詰めては墓穴を掘る。

やっと心を落ち着かせたボクと先輩の前に、オンザロックのグラスが置かれた。
クセで匂いを嗅ぐと、香ばしい洋酒独特の香りと甘い香りが立ちのぼった。
口に含むと、焦げたような香ばしい味わいと、花のような爽やかな甘さが広がる。
「なんですか? これ」
「ラスティ・ネール」
先輩はそう言うと、さっきのさび釘をカウンター下のゴミ箱に放り込んだ。

「ね、釘ってさ、硬くて強いけど、雨風にさらされると錆びるよね」
「ええ、まあ金属ですから」
「錆びると、周辺の板もダメになったりするじゃない?」
ボクはさっきの犬小屋を思い出した。
「なかは、ボロボロでさ」
まるで、あの抜け忍みたい、とボクにだけ聞こえる声で先輩が続ける。
「でもね、知ってる? ちゃんと妥協しないで作った釘はね、表面が錆びても、中は錆びないでしっかりしてるんだよ。ボロボロに崩れるさび釘との違いって、なんなのだろうね」

ボクは、とうとう最後まで名前を知る機会のなかった上忍を思い出した。
家族ともほとんど合わず里の外を転々とし、過酷な任務をこなし、確かに彼は、やさぐれて見えた。
あの中忍3人組も、胡散くさく思うほど。
でも、彼は芯から木の葉の忍だった。
仲間を大切にし、部下を大事にする、ある意味では、ごく当たり前の上忍だった。

「オレは、たとえ表面が錆びはしても、中までは錆びない釘でいたいの」
ポツンとそう言うと、先輩はその強い酒をあおった。
「ねえ、焼きむすびまだ?」
「はいはい、もう直ぐですよ」
女将さんが柔らかい笑顔を向けてくる。
「こういうひとたちがさ、生きて暮らす里を、オレたちは守るんだから」
そう言ってから、ボクを見て、先輩はニッと笑った。

「はい、焼きむすび。一個オマケです。後輩さんにどうぞ」
「ありがと」と先輩が言う。
「あたしも久しぶりにカクテル作れて楽しかったですから。お礼です」
「次は、シェイカー振ってもらおうっかな」
う〜ん、木の葉の里は、人材豊富。奥が深い。
これがこの日、ボクが学んだことだった。

焼むすびは、紫蘇やら縮緬雑魚やらゴマやらが混ぜ込んであって、おいしかった。
ニコニコと2個めの焼むすびを頬張りながら先輩はボクを見る。
「あのね、関係ないんだけどさ」
「はい、なんですか?」
「酒飲むと、もっとじんじんしてくるんだよね〜」
お願いです。そういうことを嬉しそうに言わないでください。せっかく感動していたのが台無しです。
「あ〜。しあわせ」
先輩がボクの手をギュッと握る。

待機の3日間は、こんなエロくてカワイイ先輩を拝めるのかな、とボクは思った。
確かに幸せなことだ、とボクは甘くて度数の強いカクテルを飲み干した。
焼むすびには、ちょっと合わなかったけれど……それは、それ。



<了>


Rusty nail
ハイランドモルト・ウィスキーとドランブイをステア。ヒースの花の香りや蜂蜜から作られるリキュール、ドランブイを使ったこのカクテル、甘い飲み口の割りに度数は高く、ウィスキーファンの男性に好まれる。錆びた釘、という意味を持つ。