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 お婿にいった四+カカのお話
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2007年03月12日(月)
マラスキーノ


「らっしゃい」
ぞんざいな言葉の割りに柔らかい声音は、酒屋に併設の立ち飲み屋の女主人のものだ。
「あら、久しぶり」

彼女のサバサバとした気風に惹かれ、カカシは気が向くと、この立ち飲み屋に足を向けていた。
どういうツテがあるのか、この店には諸国のさまざまな酒が揃っているのも魅力だ。
かつて滞在していた国、通過しただけなのに印象に残る国、そんな国の酒を見つけては、1杯2杯と飲む。
客層も、この辺の商店主や職人のほかは、商用で立ち寄ったらしい他国の商人が多いのも、特徴だった。
ここで年配の連中から「若造」とからかわれながら酒を飲むのが、カカシは好きだった。

一応、任務服ではなく一般人の服装をして、写輪眼を隠すために眼帯をしているが、自分が忍だということはバレているかもしれない。
それでもオヤジ連中は、カカシをただの若造として扱う。
ほんとうだったら、ここにたむろしているオヤジたちなぞ、100回ぐらい瞬殺できる自分に向かって、
『かっこつけたって、それに惹かれてやってくる女なんて、それだけのもんだよ』
『もてるからって、いい気になったら、おしまいなんだから』
などと言う。かと思えば、
『にいちゃん、男の価値はな、スタミナだよスタミナ。どんだけいいタネを残せるかなんだ』
と、説教を垂れる。

別にカカシは自分の見目がいいとも思っていないし、もてるという自覚もない。
なのに、オヤジたちはカカシのことを、見目のよい優男で、もてもてだと思っている。
自覚がないだけという突っ込みは、この際、本人には通じないので、置いておく。
スタミナ、というのは、ちょっとカカシには痛い。タネ云々のほうでは、もちろんない。
客観的に見て、カカシにスタミナがないわけではないのだが……。
むしろ、平均値以上にあると言っていい。ただ、大技を使わざるを得ないことが多いだけに、もっとスタミナがあれば、とつい思ってしまう。
スタイルのいい女性が、「あと、3センチ、ウエストが細かったら」などと気にするようなものだ。

いずれにせよ、オヤジたちの指摘の一部はカカシのコンプレックスを刺激し、あとはまったく的外れ。
普通だったら辟易するところなのだが……。
そんな彼らに、カカシは父性を感じていた。

だれにも言ったことがないし、言うつもりなどないし、知られたら憤死ものなのだが。
ほんの少しだけ、記憶の中に残る父サクモや四代目のことを、カカシは彼らに重ねていた。
個性はまったく違うが、カカシに対する視線が、とても似ていると感じたのだ。
言葉や態度はぶっきらぼうだし、言われる内容は見当違いなのだが、その目はやさしく、包み込むようで……。

「ひとり?」
ここへ来るときはひとりだから、カカシは ん?と首をかしげた。
「後輩さんは?」

ああ、そうか。
彼女はテンゾウを見ているのだ。
テンゾウがカカシを訪ねてきて、一緒に酒を買いにここへ来た。ちょうど、一ヶ月半ほど前のこと。
あの日が始まりだった、とカカシは思う。

「留守」
短く答えると、女主人は微笑んだ。
「あの方、一週間ほど前にこられたんですよ」
え? とカカシは顔をあげた。ついでに「ビールを」と注文する。
カカシはこの10日、里を離れていた。暗部服から中忍以上が着用する任務服に着替え、国家間会議の警護に当たったのだ。
「最初、先輩には内緒にしてください、っておっしゃって」
「内緒に? どうしてだろう」
独り言のように呟けば、
「そう思うでしょう? だから、あたしも言ったんですよ。そうしたら、なんだかもごもごと言ってたけど。あれは、要は、恥ずかしいってことなんでしょうね」
「恥ずかしい? そうなの?」
「ええ、たぶん。勝手に先輩のテリトリーに入ってしまって、とか言ってましたけど、結局は恥ずかしいってことだから。あたしは、はいはい、内緒にしときますよ、ってお答えしたんです」
悪戯っぽい笑顔に、カカシは苦笑した。
「内緒にしてないじゃない」
「いいんですよ。結局、内緒にしなくてもいい、ってことになったんですから」
「そうなの?」
「ええ、それにね。きっと、知ってほしかったんじゃないですか?」
「何を?」
いやだ、わかってないよ、このひと、と女主人は笑った。
「それぐらい、気に掛けてるってことじゃないですか」

そっか。また、すれ違ってばかりだから、心配したのかもしれない。

「やだね。何、思い出して、にやついてるんですか」
からかわれて、カカシも苦笑する。
「あのね。内緒なんだけどね」
女主人は、笑顔のままカカシを見る。
「オレ、あいつに惚れてるの」
カカシの言葉を受けて、彼女の笑顔は、いっそう深くなった。
ああ、このひと、こういうことに偏見ないんだ、とカカシは思った。
「大事、なんでしょう?」
「うん。大事すぎて、どうしていいか、わかんない」
「ほんと、このひとたちったら」
女主人はカラカラと笑った。
「いいですねぇ、若いってことは。後輩さんも、おんなじこと言ってらっしゃいましたよ。あら、いやだ、こっちは、ほんとに内緒にしとくはずだった。あらあら、どうしましょう」
あらあら、と言いながら、奥のほうにしつらえた小さな厨房に彼女は消えた。

同じこと? え? 大事ってこと?

かぁ、と頬がほてるのを、なんとか気力で沈めたところに女主人が戻ってきた。
「はい、これ。預かっていたんですよ。珍しい酒が手に入ったからって。もし先輩が来たら出してあげてください、って」
カカシは、小ぶりな瓶を見る。
「マラスキーノ? へえ。チェリーのリキュールじゃない」

そういえば、3日ほどの里外任務で、そっち方面にテンゾウが行ったのは知っていた。
暗部2個小隊での、王族の警備だった。
公式行事なら、もちろん正規の軍隊が警備につくが、表向き物見遊山、その実、内紛のある地域を平定するために秘密裏に相手方のトップと合うのが目的だった。だから暗部が配備されたのだ。
最初はカカシも同行するはずだった。急に正規部隊から依頼があって、借り出されなければ。
結局、テンゾウとは別の任務で、それぞれ里外へ。カカシのほうが任務期間が長かったから、その間にテンゾウは里に戻り、カカシが帰ってきたら、入れ違いでテンゾウは里外任務。

――ま、そんなもんでしょ。

それにしても、そんな緊張を強いられる任務の合間に、よく酒など手に入れる暇があったものだとカカシは苦笑した。
「ごめーんね。あいつが、酒、持ち込んじゃって」
「あら、ちゃんと持ち込み料、払ってくださいましたよ。そんなの気にするような店じゃない、ってお断りしたんですけどねえ」
あれま、そんなとこでも出来たヤツなんだ、とカカシは感心するより、呆れた。
「なんでもね。お仕事が順調に運んで、半日ほど余裕ができたんですって。それでお取引先の方のお相手がてら、少しだけ観光ができたとか」
ふーん、和平交渉、うまく行ったんだ、とカカシは納得した。
「お取引先の方のお相手がてら」というのは、たぶん私服での警護についたのだろう。SP代わりのようなものだ。
ただ、面をつけるわけにはいかないので、受ける側の忍のリスクがあがる。
だから、私服での警備というのは破格の契約料になる。それを払えるだけの相手だった、というわけだ。

「甘い酒、苦手?」
「いいええ。酒屋に苦手はありません」
「じゃ、付き合って」
封を切って、女主人と乾杯する。
「あら、いい香り」
「うん。たくさんは飲めないけれどね」

早く帰って来い、テンゾウ。

「今度、後輩と一緒に来るよ。それまで、取っておいて」
「はい、大事にとっておきますよ……らっしゃい」
ガラリと引き戸が開いて、5人ほどが入ってきた。みな、地元の商店主だ。
「熱燗つけて」
「オレ、ビール」
いきなり店内が賑わう。
「お、兄ちゃん。また、洒落たもの飲んでるな」
「はあ、まあ」
「そんなだから、遊び女みたいなのしか、よってこないんだよ」
「おかげさまで、彼女できません」
「しょうがないなぁ」
ガハハと笑い飛ばされて、カカシも笑う。

――彼女とは、縁がなさそうです。
   だって、オレ。男の後輩にメロメロですから。

その日も、オヤジたちの酒の肴になって、カカシは自室に戻った。

テンゾウ、早く帰って来い。
待ってるから。
早く。

天上に向かって手を伸ばし、呟いた。

そしてにわかに自分の所業に照れて、布団を被る。
「おやすみ」

どうか、無事、帰ってきますように。
あいつは強いけど。
でも、やっぱり心配だから。
だから、つい保険をかけてしまう。

帰ってきたら、一緒に、こうしよう、ああしよう。
日常のなかに、散りばめておく。
帰ってきたら、笑い話になるように。

恋する男なんて、こんなものさ。




<了>


Maraschino:
チェリーを原料とし、蒸留と、ろ過を繰り返すことで無色透明なリキュールとなる。濃厚な香りが特徴的。