世田谷日記 〜 「ハトマメ。」改称☆不定期更新
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2011年12月30日(金) 1974年のユリイカ

 
年末の買い物に出て、結局今年も数の子を買ってしまった。数の子を買って食べるからには自分で塩抜きして浸け汁作って味付けまでやりたい。それから、お膾。いまやお正月に自分でつくるのはお雑煮を除けばこの二つだけ。いわば最後の砦なのだ。

それで、夜、夕飯の片付けが終わったあとで一時間くらいトントン、カタカタやってみた。すると、あれ?どうしたのかな、今年はいつもより美味しくできたような気がする。もともとすぐ出来ちゃう簡単なものではあるのだけど、今年はいつも以上にパパッと簡単に出来てしまった。それなのに…。イライラ忙しがらずに楽しく作ったからなのかな。

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古書店、即興堂さんへも寄って、今年最後の古本購入。ユリイカ臨時増刊 「総特集オカルティズム」。表紙は沢渡朔の「少女アリス」だ(なつかしくて涙が出るな)。「少女アリス」が刊行されたとき、オープンして間もない渋谷パルコで写真展が開かれた。そのパルコへ父と妹と三人(!)で行ったとき、すっごく観たかったんだけどそうもいかなくて、セーターを買ってもらって帰ってきた覚えがある。いったいいつ出たユリイカだろうと思って確かめたら1974年7月、私が買ったのは1980年8月に出た第二刷だった。

斜め読みしてみると文体も文章も、これだよ、ちゃんと頭のいい人が書いて頭のいい人が読む文章ってのは!と叫びたくなる美しさ。ブレず、ふざけず、おもねらず、テーマへの愛情を持って語ってくれている。それも、執筆者全員がですよ。これっくらいじゃないと、一生懸命背伸びして私なんかがわざわざ読む価値ないじゃん。せっかく背伸びするんだから、背伸びしがいのあるちゃんとしたものを読みたいのよ。

執筆者の筆頭が渡辺一夫(東大の仏文の先生でラブレーの訳者として著名)。戦後の知識人のひとりとして有名な人だったけれど、こういう人にきちんと書いてもらわないと「オカルト」扱うのは危険だものなぁ。その次に澁澤龍彦がきて、このあたりはお約束。おおおっと驚いたのが掉尾を飾るユングの「易と中国精神」(中村健二 訳)で、これはもう、読むのが勿体なくなるくらい示唆に富んで面白い。つまみ読みしていると、湯葉みたいにふにゃんふにゃんに柔らかくなってしまいそうになる。すごーく変てこだけど、そんな感覚。

編集後記は恐らく編集人であった三浦雅士によるものと思われるが、これがまた。「隠秘主義とは何か。それはおそらく照応の感覚である」という出だしからして膝をパーンと打ちたくなる。比較的短くてエッセンシャルな文章だから、すごく興奮するのだけれどうまく説明するのが難しい(なにしろ必死の背伸び状態)。ただ、「あなたの計算はほとんど何も生まないけれど、あなたの感覚には可能性がある。だから今までどおり、ひとが見過ごすようなものもよく見て記憶して。記憶するのが無理なら、無意識の中へ放り込むだけでもいいから」と言われているような気がするんだな。何だろうね、この嬉しさ。

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明日(大晦日)は東京ドーム天然温泉、スパ・ラクーアへ行こうと思っていたんだけど、年明け三日過ぎにしようかなと思っている。あともう少しだけ家の中を片付けたいし、意外に混んでいるんじゃないかという気もするのだ。
生協で入館券を割引きで買ってあるのだけれど、三日以降なら特定日割増しも払わなくてすむしね。平日に空いたお風呂でのんびりして寿命をのばすんだー。
 










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