日々の泡

2010年05月27日(木) ブローチ

友人が鎌倉にバードカービングの展覧会を観に出かけた。
ギャラリーに並んだ美しい木彫りの鳥 それは素晴らしかったと教えてくれた。
木彫りの鳥--そういえば、わたしは木彫りの鳥のブローチを持っている。
もう何年も昔のこと。わたしには妹と呼べる人がいて、高原の小さな店で、彼女はわたしにそのブローチを選んでくれた。
きれいな青い鳥のブローチがほしいと言うわたしのために、彼女が選んでくれたのは、アオビタキのブローチだった。
その店の中には小さな木彫りのさまざまな作品があった。
アオビタキはその中にしつらえられたブローチのコーナーの一画に他のたくさんの鳥たちと並んでいた。
触れるとすべすべと優しい木の触感。
丁寧に仕上げられたのだね、君は。
あの高原の小さな店で
妹とわたしは美しい青い鳥を手に入れた。
アオビタキは今もわたしの側にいるけれど
妹はもういない。
妹は、もう妹と呼べない間柄になってしまった。
その人は弟のお嫁さんだった。
みんなが若すぎて、いつか何かが崩れていった。
彼女が妹でなくなったことは、わたしの心にも傷を作ったし、わたしももっと彼女を大切にするべきだったと後悔した
アオビタキを思うと、胸のどこかがチクンと痛い。
実際、針で止めるブローチは、いつもわたしの体のどこかをちくんと刺した。
シャツに止めるときは胸を
帽子に止めるときは頭を
わたしがお行儀が悪いのか、いつもチクリとどこかを刺すのだった。
だれかにもらってもらおうかしら?
だれか鳥の好きな人に このブローチをあげようかな。
そう思っていた。
今日、ブローチを思い出して決心した。
自分で持っていようと。
時々、出してみて、自分の心をチクンとさせようと。
そして、妹のことを思いだそう。
遠い日の愚かだったわたしたちを思いだそう。
そう決めた。


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茉莉夏 [MAIL]