友人が鎌倉にバードカービングの展覧会を観に出かけた。 ギャラリーに並んだ美しい木彫りの鳥 それは素晴らしかったと教えてくれた。 木彫りの鳥--そういえば、わたしは木彫りの鳥のブローチを持っている。 もう何年も昔のこと。わたしには妹と呼べる人がいて、高原の小さな店で、彼女はわたしにそのブローチを選んでくれた。 きれいな青い鳥のブローチがほしいと言うわたしのために、彼女が選んでくれたのは、アオビタキのブローチだった。 その店の中には小さな木彫りのさまざまな作品があった。 アオビタキはその中にしつらえられたブローチのコーナーの一画に他のたくさんの鳥たちと並んでいた。 触れるとすべすべと優しい木の触感。 丁寧に仕上げられたのだね、君は。 あの高原の小さな店で 妹とわたしは美しい青い鳥を手に入れた。 アオビタキは今もわたしの側にいるけれど 妹はもういない。 妹は、もう妹と呼べない間柄になってしまった。 その人は弟のお嫁さんだった。 みんなが若すぎて、いつか何かが崩れていった。 彼女が妹でなくなったことは、わたしの心にも傷を作ったし、わたしももっと彼女を大切にするべきだったと後悔した アオビタキを思うと、胸のどこかがチクンと痛い。 実際、針で止めるブローチは、いつもわたしの体のどこかをちくんと刺した。 シャツに止めるときは胸を 帽子に止めるときは頭を わたしがお行儀が悪いのか、いつもチクリとどこかを刺すのだった。 だれかにもらってもらおうかしら? だれか鳥の好きな人に このブローチをあげようかな。 そう思っていた。 今日、ブローチを思い出して決心した。 自分で持っていようと。 時々、出してみて、自分の心をチクンとさせようと。 そして、妹のことを思いだそう。 遠い日の愚かだったわたしたちを思いだそう。 そう決めた。
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