日々の泡

2009年12月13日(日) 「フレディ・マーキュリーと私」ジム・ハットン

 
「フレディ・マーキュリーと私」
著者 ジム・ハットン著 島田 陽子訳     ロッキング・オン
フレディの最期の恋人であったジム・ハットンによって書かれた本。
スーパースターのフレディとひとりの無名の美容師ジム。
美容師といってもスタイリッシュな最新モードのカットをするような美容師ではなくて、ジムはコンサバなかっちりしたカットをするような地味な美容師だったようだ。
私生活では、ゲイの人たちの集まるバーでお酒を楽しむ他は
休日には大家さんの庭の手入れで明け暮れるような静かな生活を好んでいた。
そんな堅実な彼がフレディの最期の時を一緒に暮らしてくれていたとはなぜだかフレディの親戚でもないのにほっとさせられる思いが湧く。
エイズをカミングアウトしてからまもなくのフレディの死、とてもショッキングだっただけに、この本がどんな告白をしているのか正直恐る恐るで読んだのだけれど
それは心にしみる恋愛小説のようだった。
ふたりが交わし合う、小さな贈り物--四つ葉のクローバーであったり、ラリックの小さなねこの置物であったり、…
短いお互いの言葉の数々が愛情深く語られている。
ジムは「自立」をモットーとして、美容師をやめてからも庭師として自活しようとする。
彼の人生に対するそんな真摯な思いがフレディの晩年に穏やかさをもたらしたことが読んでみてよく理解できた。
彼自身もHIVポジティブということも語られていて、フレディ亡き後の彼の生活が温かなものであるように祈らずにいられない気持ちになった。


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茉莉夏 [MAIL]