2009年12月12日(土) |
潜水服は蝶の夢を見る |
「潜水服は蝶の夢を見る」 著者 ジャン=ドミニック・ボ−ビ−著 河野 万里子訳 ずっとずっと昔、「ジョニーは戦場へ行った」という映画を観た。 確か第一次大戦の頃の話だったと思う。 主人公・ジョニーは頭部に障害を受け病院のベッドに寝たきりとなってしまう。 傷を負った頭は木製の箱をかぶせられている。 彼の症状からして、もはや意識はないとドクターたちは考える。 けれど、彼の意識はしっかり目覚めていて周囲の一部始終を聞いている。 彼は自分が目覚めていることを知らせようとするが喋ることができない。体中どこも動かすことができない。 焦燥感と苦悩 もどかしく重い映画だった。 。
「潜水服は蝶の…」の著者はファッション誌「ELLE」の編集者 ある日突然脳梗塞からILS(Locked in syndrome) 身動きができないのに意識は鮮明な状態に陥る。 この本はその著者がかろうじて動かすことのできる左まぶたのまばたきの回数をアルファベットに変換して綴られた。 と書いてしまうと重い闘病記をイメージしてしまうかもしれない。 でも困難なコミュニケーションで書かれたであろうその言葉は 軽やかで美しい。 初夏の渚に踊る光のきらめきにも似て まるでルルーシュの映画のよう。 少々の皮肉と たっぷりのエレガンス。 閉じこめられた体の内側で、彼の意識は優しく時を見つめている。 「ジョニーは…」と 「潜水服は…」が同じような状況を描いているのに随分と異なるのは ジョニーは動きと言葉だけではなくて 光さえも失ってしまったからだろうか。 今日はインディアンサマー 暖かい陽射しがリビングに満ちていた。 掌で陽射しを感じてみる。
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