2009年07月24日(金) |
携帯電話は資源の宝庫って本当? |
日本では天然資源が少なく、多くを輸入に頼っていることは皆さんもご存知のことでしょう。多くの資源を用いて質の良い製品を作り、海外へ輸出して利益を上げる。長年、日本が行ってきた産業構造ではありますが、どうしても原材料、中でも天然資源の安定供給に一喜一憂する側面があったことも事実でした。
このような中、携帯電話やパソコンといった電子製品の回収が注目を浴びています。以前からリサイクルは少なからず行われてきましたが、これら電子製品のリサイクルが注目を浴び出した理由の一つは、中に使用されている天然資源、特にレアメタルと呼ばれる資源が数多く存在するからであると言われています。ある調査によると世界中で存在するレアメタルのかなりの部分が市場に出回っている電子製品に含まれているのだとか。これら製品を回収し、レアメタルを取り出すことができれば、輸入に頼る以上に心強いレアメタル資源確保につながる。現在、如何にこれら電子製品の回収、リサイクルを有効に行うかが国を挙げての課題となっているようで、先日も携帯電話の回収がなかなか進まないことが記事になっていたくらいです。
さて、歯科界では既に資源のリサイクルが行われています。歯科では多くの貴金属が使用されています。代表的なものが銀歯です。一見すると銀のように見える銀歯ですが、実際はいくつもの貴金属の合金です。金、銀、銅、パラジウムといった貴金属が多数含まれています。患者さんの口の中で使われている銀歯はいつまでもそのままであることはありません。残念ながらむし歯になったり、何らかの理由で歯が割れたりすることで銀歯が取れ、元の歯に戻すことができない場合があります。このような状況になった銀歯は患者さんの了承を得て、歯科医院が回収することが多いのですが、回収された銀歯は専門の業者に委託し、リサイクルされるのが普通です。リサイクル業者は銀歯を回収すると、独自の技術で銀歯から貴金属を分離し、回収します。分離した貴金属を再度様々な用途に再利用するために加工し、販売し、利ざやを稼いでいます。 既に歯科界ではこうした再利用貴金属を銀歯の材料として使用していることが多いのが現実です。銀歯の成分は国の企画がありますから、この企画にのっとり、回収金属を元に製品化されるわけです。
このようなことを書くと、歯科界では限られた貴金属を有効に利用しているように思われるかもしれませんが、問題もあるのです。それは、再利用された貴金属の質の問題です。歯の詰め物や銀歯、入れ歯を作る歯科技工士の人の話によれば、再利用ものの歯科用貴金属を用いた銀歯は微妙に質が落ちるというのです。見た目ではわかりにくいのだが、実際に作ってみると、再利用ものではない、純粋な資源利用の歯科用貴金属の方が質が良いとのこと。どうしてこのようなことが起こるのかはわからないが、おそらく回収された貴金属を分離する際、完全に分離できず、不純物が混じっているケースが多いのではないか?との話でした。
これは携帯電話やパソコンといった電子製品からのレアメタル回収でも言えることかもしれません。貴重なレアメタルですから、再利用することは非常に有効な資源確保であることは言うまでもありませんが、それも優れた金属分離技術があってのこと。この技術が未熟だとせっかく回収したレアメタルが本来の質を発揮できず、結果として製品の質にも悪影響を及ぼしてしまうことになりかねません。
日本には電子製品に含まれるレアメタルを中心にした天然資源が数多くあると声高々に主張する人がいますが、実際のところ、純粋な回収合金分離技術が無ければ、意味がありません。回収合金分離技術の進歩は著しいものがあるとは思いますが、まだまだ完全なものとは言い切れない部分があるのではないか?既に再利用貴金属を使用している歯科の現状を見てそのように感じる、歯医者そうさんでした。
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