2009年06月10日(水) |
大病する人は歯が悪い? |
最近、ひょんなことから近所の病院からの紹介患者を受け入れています。歯医者として本音を言えば、患者さんは体にリスクの無い方である方がいいのです。診療中、患者さんが急変することは歯医者にとって非常に怖いことですから。ただし、近所の病院は非常に配慮がなされていて、紹介患者さんの詳細な紹介状があり、病状が安定している方を紹介してくれます。しかも、何か問題が生ずれば責任を持って対処することを言ってくれています。僕の方も、それなりの態勢を取って診療をしていますが、非常に心強い限り。このような紹介患者さんは、返って安心して診療ができるものです。むしろ、自分が持っている病気のことを何も言わなかったり、無自覚である患者さんの方が怖いのです。
この近所の病院からの紹介患者さんですが、総じて歯の状態が芳しくありません。このことは患者さんも自覚していたようですが、他の病気の影響で歯医者に通うこともできず放置していた方がほとんどです。治療の冒頭に、患者さんには通院治療期間が長期にわたることを説明するのですが、説明しながら感じるのは、これら患者さんがどうして歯が悪くなったのか?という疑問です。 確かに他の病気の影響で歯がぼろぼろになったことは考えられなくはありません。口や歯も体の一部。全身の健康状態の影響を受けるのは自然のことだと言えるでしょう。大病をして体に劇的な変化が生ずれば、口の中にも何らかの変化があっても不思議ではありません。 その一方で疑問に感じるのは、果たして目の前にする悲惨な口の中の状態が果たして大病の影響なのかということです。実際は、長年にわたって徐々に歯の状態が悪化し、大病を境にして一気に悪化したのではないだろうか?と感じるのです。 何度も書いたことですが、今や日本人の8割以上が歯周病です。これは非常にショッキングなことではあるのですが、多くの人が無自覚であったり気にはしていても積極的に治療を受けなかったり放置しているのが現状です。その影響でしょう、40〜50歳ぐらいから歯を失う方が増えてくるのです。また、むし歯においても年齢の上昇とともに本数が多くなる傾向は今も変わっていません。歯を削れば削るほど歯の耐久性は悪くなるのです。そうなれば、年を重ねるとともに歯を失う確率が高くなる。
大病をする背景には、日頃の生活習慣が大きく影響をしていることは確かです。多くの方は生活のために体に異常を感じていても敢えて無視したり、放置しながらも日々の生活のために働いているのが現状です。そのため、異常が進行し、ある日突然爆発し、大病になる。 最近では生活習慣病といって、大病になる背景には大病に至る生活習慣を見直す必要があるとして、特定検診制度や特定保健指導などが制度化されています。まだまだ広く周知されているわけではありませんが、増え続ける医療費を抑制するために、死の病に至る前段階で食い止め、病気の予防につなげることを目的としています。
僕は一部の大病を経験した患者さんしか見ていませんが、歯の健康と全身の健康に何らかの関係があるのは確かでしょう。数年前から行われている調査でも歯の状態の良い人はそうでない人に比べて他の全身の病気の医療費が少なくなることが言われています。果たして歯が良いから全身が健康なのか、それとも全身が健康だから歯が良いのか?どちらが正しいかは今の時点ではわかっていません。現在、この関係を調べる調査が進行中でその結果がでるのはかなり先になりそうですが、最近頻繁に診る大病をした患者さんの口元を診ると、どうも歯が健康な人は大病になりにくいのではないかという思いを強く持ちます。
歯の健康は日頃の丁寧な歯磨きと歯医者への定期的なチェックにより容易に達成できるもの。少しでも健康長寿を達成するために日頃のお口の管理は決して無駄なことではないように感じる、歯医者そうさんです。
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