歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2009年06月09日(火) 歯を白くすること(ホワイトニング)の意味

先日、ある患者さんが来院されました。特に症状は無かった患者さんでしたが、定期検診をして欲しいということで来院されたのです。実際にその患者さんを診てみると、むし歯はありませんでしたが、前歯に歯石と前歯の表面に色素系の着色がありました。僕は歯磨き指導をした後、これら汚れを専用の機材と材料を用い、取り除きました。一度付着した歯の色素系の汚れはこれら専用機材と材料できれい除去でき、もとの歯の色が復活しました。
この治療の後、僕は実際にその患者さんにきれいになった歯を見せたのですが、患者さんは満足そうな表情を浮かべながらも僕に質問してきました。

「これってホワイトニングなのですか?」

最近、審美歯科なる言葉が世の中に広まりつつあるようです。かつて“芸能人は歯が命”というキャッチコピーが流行したことがありましたが、審美を追求すれば、自ずと口の中の歯も白くしたいという欲求を持つ方が出てくるようです。実際に芸能人は自らの姿そのものが商売道具です。特に顔に関しては一種の広告塔のようなもの。顔のパーツの一つである歯も非常に重要なパーツの一つで、昔から芸能人は少しでも歯を白くしたい、歯並びをよくしたいとして歯を触ってきました。
僕ら歯医者から見れば、ほとんどの芸能人が何らかの形で審美歯科治療しています。中には審美歯科治療しなくてもいいのではないか?と思われるような芸能人でも行っているくらいです。これら芸能人の歯はほとんどが白くするものです。それも過剰に白い歯を好む傾向にあるようです。
このような過剰に白い歯が本当に良いのかはよくわかりません。芸能人であれば、過剰なくらいの方がファンやマスコミに対して与えるインパクトが強くなるのでいいのかもしれません。ただ、本来人間が持っている健康的な歯の白さを考えれば、果たして芸能人が追求する歯の白さが本来のホワイトニングで求める白さなのかと問われると、僕は疑問に感じます。

そもそも、ホワイトニングという言葉は、歯を白くするという意味がありますが、僕が思うホワイトニングというのは、先に書いたように人それぞれが持つ健康的な白い歯にする治療です。白いと書きましたが、白いという定義は非常に曖昧です。本来の歯の白さは真っ白というよりも黄白色に近い白さです。ただ、人によっては褐色が強かったり、真っ白に近い人もいます。
歯の色は歯並びによっても影響を受けます。歯並びが悪い人の場合、歯の重なりで影ができ、それが微妙に歯の色に影響を与えます。
前歯のむし歯やむし歯の治療痕も歯の色に影響を与えます。前歯のむし歯の治療の場合、レジンと呼ばれる充填材が使用されますが、これは時間が経過するとともに変色してきます。治療した当初は目立たなくても時間経過とともに色が変色し、目立ってくることもあるのです。
また、歯磨きが適切でなく、歯石や汚れが付着したままの人も歯の色が変わる原因となります。
ホワイトニングといっても歯を白くする前の歯の状況というのは様々です。歯の汚れを除去すれば充分な人もいれば、歯の矯正治療を勧める場合もあります。また、被せ歯や歯のマニキュアのようなものを勧める場合もあれば、歯の内部から漂白剤で漂白したり、家で歯の表面を漂白する方法もあります。

いずれにせよ、歯を白くすることを希望される患者さんには実情に合わせた治療が必要だと考えます。その白さは決して芸能人がしているような白さではありません。その人にとって健康的に見える白さを追求する。それが歯のホワイトニングなのです。


 < 前日  表紙  翌日 >







そうさん メールはこちらから 掲示板

My追加