2009年06月02日(火) |
むし歯用ワクチン未だ開発されず |
数週間前、メキシコに端を発した新型インフルエンザが日本にも入り、あっという間に神戸、大阪を中心とした関西地域から周辺地域、そして、関東方面にも移っていったのは皆さんご存知のことでしょう。患者数がカウントされていますが、実際に症状が出ていない保菌者、すなわち不顕性感染者数はかなりの数になると見られています。
この新型インフルエンザが恐れられている理由は、人類がこれまで遭遇したことがない遺伝子を持つインフルエンザウィルスが原因となっているからです。 インフルエンザウィルスをはじめとしたウィルスは抗生物質が効きません。その理由はウィルスが寄生虫の如く細胞の中に入り込み、増殖するからです。抗生物質は細胞の中まで浸透しないため、増殖しているウィルスに対して抗生物質は作用しにくいのです。
それでも、人間の体はうまくできていえ外部からの目に見えない微生物の侵入に対し、防御機構を持っています。免疫です。ウィルスに対しても抗体というものを作り出し、ウィルスに攻撃を加えるような仕組みになっています。 免疫は外部からの微生物の侵入があって初めて機能しだしますが、抗体ができるのに時間がかかります。今回のような新型インフルエンザの場合、人類が一度も遭遇していなかったタイプのインフルエンザウィルスであるわけですから、基本的に人類はこのインフルエンザウィルスに対し免疫を持っていません。そのため、感染が広がっているわけですが、感染した人によってはぼちぼち免疫機構が対処しはじめ、抗体を作りだしていることでしょう。
新型インフルエンザウィルスに関しては、ワクチンの開発が急がれています。ワクチンはいくつかのタイプがありますが、大半が特定の微生物の活性を抑えたものであったり、死菌であったりします。これらワクチンを注射するということは、人工的に新型インフルエンザを起すということです。ワクチンの中に含まれる新型インフルエンザウィルスに対する抗体を作り出すことにより、外部からの新型インフルエンザウィルスの感染に対処することを目的としているのです。おそらく、秋口にかけて新型インフルエンザウィルスに対するワクチンが急ピッチで開発され、世に出てくることでしょう。
ところで、以前から口の中のむし歯に対してもワクチンの開発が行われてきました。むし歯の原因は口の中に存在するむし歯菌によって引き起こされます。これらむし歯菌に対する免疫があれば、むし歯は発生しません。それなら、むし歯菌に対するワクチンと作り、投与すればむし歯が出来ないのではないか?という発想のもと、むし歯ワクチンの開発が進められてきましたが、残念ながら未だに世の中にその姿を見せていません。僕の手元には今から20年以上前に間も無くむし歯ワクチンが開発されると大々的に報じた新聞記事の切抜きがありますが、現在、このワクチンが正式に開発されたという話は全く耳に入っていません。
どうしてむし歯ワクチンが開発されていないのか?愚考するに、むし歯菌と呼ばれるむし歯の原因菌がはっきりとつかめていないからではないかと思われます。むし歯の原因菌はミュータンス菌であるとの話が世に広まっています。確かにこれは間違いではなく、むし歯の原因菌の候補の一つとして非常に有力ではあります。ところが、ミュータンス菌が無い状態でも口の中にむし歯ができるのです。ということは、ミュータンス菌のみに対するワクチンを作ってもむし歯の発生を抑えることはできません。 現在、歯科の研究者の間では、むし歯の原因菌は複数あってお互いが作用しながらむし歯ができるのではないかと言われていますが、その詳しいメカニズムは未だにわかっていません。これは歯周病も同じで、歯周病の原因菌はいくつか有力な候補は挙げられているものの、どれかと特定することが未だに出来ていないのです。
現在のところ、むし歯ワクチンの開発は未だ道半ばです。今後、研究が進めばむし歯ワクチンは開発されるかもしれませんが、それよりも毎日適切な歯磨きをし、バランスの良い食事をして、規則正しい生活をしていればむし歯はできません。むし歯ワクチンが開発されなくてもむし歯は予防できることがわかっています。
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