歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2009年05月28日(木) 寒天で歯型を取る?!

今から歯型を取りますよ。それでは寒天の用意をお願いします。」

ある患者さんの被せ歯の作るために僕が発した言葉です。その患者さん、僕が発した言葉に敏感に反応されました。

「先生、寒天ってあの寒天のことですか?」

歯医者で寒天を使用するのは意外と思われたのでしょう。寒天は食材として様々な料理や菓子に使用されています。僕自身、蜜豆が大好きなのですが、理由の一つが中にある寒天の食感がいいからです。おそらく寒天が好きな方は一人や二人ではないでしょう。

そんな食材として有名な寒天。歯型を取る時に利用するのが信じられないかもしれませんが、事実はそうなのです。歯医者にとって寒天は非常に歯型を取る印象材として非常に重宝する材料の一つなのです。

寒天はある一定の温度以上に熱するとどろどろとした液状になります。これは寒天のゾル化と呼ばれる現象ですが、このゾルが温度が下がってくると液状から固形状に変化します。これはゲル化と呼ばれる減少です。おそらく寒天を調理した人ならしょっちゅうお目にかかる現象でしょう。このゾルからゲルへの反応を利用して歯型を取るのです。

寒天は非常に安価な材料です。なぜなら、食材を中心に大量生産されているからです。しかも、寒天はゾルからゲルになると液状から固形状となります。一度固形状になった寒天は軟らかい物性を維持し、変形しない物性があります。これが歯型と取る材料として非常に好都合なのです。
熱く熱した寒天を歯型を取る対象となった歯に注ぎ、直ぐに冷却する。そうすると、きれいな歯型を取る事ができます。しかも、変形しない歯型が取れ、コストがかからない。歯医者では30年以上前から寒天を精密な歯型を取る材料の一つとして利用してきたのです。

もちろん、実際に口にする寒天と歯型を取る寒天とは多少物性が異なりますが、それでも主成分が寒天であることに変わりはありません。多くの歯医者では毎朝診療開始前に寒天を温めることを日課の一つとしています。
寒天は既に歯型を取る際に取り入れられて歴史のある材料ですが、これからもずっと歯医者で重宝される印象材の一つとして生き残っていくことでしょう。


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