歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2009年03月04日(水) 乳歯脱落 大人への階段を上がるために

食事中、ある食べ物を食べていると突然、“ガリッ”という音と衝撃が口の中からしました。何か硬い物でも咬んだのか?口の中には血の味もします。舌で触ってみると小さいながらも非常に硬い。急いで口の中の外に出して見ると、5ミリ程度の白い固形物が見えました。僕は直ぐに気が付きました。これは乳歯だと。

これは今から36年前、僕が7歳の頃に初めて下の乳歯の前歯が抜け落ちた時のことです。しっかりしていた乳歯の歯がぐらつき始め、今にも抜けようとしていたのですが、抜けそうに抜けない状態が続いていました。自分で取ろうとしても痛くて抜くことができず、そのままにしていたのです。

このような乳歯が抜ける経験は誰でも幼少期に体験していることでしょう。ぐらぐら揺れていた乳歯が何か物を咬んだ瞬間に抜け落ちる。何とも気持ち悪い衝撃と音がするものですが、抜け落ちた歯の歯肉の下には永久歯の頭の一部が見えています。僕も何度かこのような経験をしてきましたが、歯が抜け落ちる度に大人への階段を上がっているような気になったものです。

さて、僕は定期的に子供の歯を見ているのですが、現在、7歳の下のチビの乳歯の何本かがぐらついているのを見守っています。既に下のチビは6歳臼歯と呼ばれる第一大臼歯4本が生え、下の前歯2本も生えています。既に永久歯が生えているにも関わらず、下のチビはまだ乳歯が自然に脱落した経験がありません。それはなぜか?
まず、6歳臼歯は永久歯ではありますが、乳歯列の一番後ろに生える歯ですから生えかわってくる歯ではありません。下のチビの場合、既に生えている永久歯は、乳歯が生えているのにも関わらず乳歯よりも内側に永久歯が生えてきたため、僕が乳歯を抜歯した経緯があります。

これまで何回か書いてきましたが、永久歯が生えてきたにも関わらず乳歯が抜け落ちない場合、抜歯の対象となります。本来なら乳歯は永久歯が生えてくると抜け落ちるはずなのですが、生えてくる永久歯の位置が乳歯の真下ではない、ずれてくる場合、乳歯は抜け落ちに残る場合があるのです。これは良いことではありません。永久歯の歯並びが悪くなる一因にもなりますし、むし歯や歯肉炎の原因にもなります。
小学校の歯科検診においても抜け落ちない乳歯は必ずチェックし、永久歯が生えてきているのに残っている乳歯がある生徒には抜歯勧告を行うのが普通です。

下のチビの場合、下の前歯2本の内側に永久歯が生えてきていたのです。僕は嫌がる下のチビを言い聞かせ、抜歯をしました。その後、内側に生えてきた永久歯は徐々に外側に移動しながら生え、今では本来の前歯の位置に生えています。
これは良かったのですが、下のチビはまだ自分で乳歯が抜け落ちる経験をしていません。乳歯は歯医者であるお父さんが抜くものと思い込んでいる節があるくらいで、時々僕に尋ねてきます。

「ぐらぐらしている歯を抜かなくていいの?」

僕は“自然に取れるのを待とうよ“と言いながら様子を見ています。
おそらく、今月中に下のチビのぐらぐらしている乳歯は抜け落ちるでしょう。下のチビもグラグラしている歯が気になって仕方がないようですが、親としてあの“ガキッ”という衝撃と音は体験して欲しいと思います。大人への階段を上がるためにも是非とも経験しなければならないことの一つですから。


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