歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2009年02月23日(月) 鼻炎と歯痛

先日、歯痛を訴えた患者さんが来院されました。何でも数日前から上の奥歯に違和感が生じたのだとか。そのうち徐々に噛むと痛くなるような感じとなり何か歯にむし歯ができたのではないかと疑い、うちの歯科医院を受診したのだとか。

早速、口の中を診てみました。患者さんが訴える奥歯は左上の奥歯だったのですが、特にむし歯は認めず、歯肉が赤くなったり、腫れたり、膿を認めることはありませんでした。極めて健康な歯ならびに歯肉の状態だったのです。歯を叩いていくと第二小臼歯と呼ばれる歯が最も痛がられ、その次に第一大臼歯と呼ばれる歯に違和感があるようでした。口全体を撮影することができるレントゲン写真を撮影しながら、患者さんに問診をしたのですが、その際、僕はあることを確認しました。

「最近、鼻や頬が重たい感じがありませんでしたか?」
「実は、先日来、近くの耳鼻科の先生の診療所で鼻炎の治療を受けています。」

撮影したレントゲン写真を確認しながら、僕は患者さんに伝えました。
「今回の歯痛の原因は歯ではないようですね。」
「えっ!一体どういうことですか?」
「原因はここです。」

僕がレントゲン写真のある部分を指差しました。そこは、左上の奥歯の根っこ付近。正確には上顎洞(じょうがくどう)と呼ばれる場所でした。
人間には解剖学的に頭の部分、脳の下部に空洞があります。大きく分けて4つの空洞があるのですが、これを専門的に副鼻腔と言います。中でも奥歯の根っこの近くにあるのが上顎洞と呼ばれる副鼻腔です。副鼻腔は鼻と交通しているのですが、それ故に鼻に何らかの炎症やばい菌による感染が生じると副鼻腔に波及することがあります。これが副鼻腔炎、いわゆる蓄膿です。鼻詰まりや鼻や頬が重たくなったり、臭い鼻汁が出たりするのが特徴です。通常はこうした症状なのですが、副鼻腔炎の中でも上顎洞炎の場合は、歯に異常を感じるようなことがあります。歯の中でも上顎洞と近接している上の歯の第二小臼歯、第一大臼歯と呼ばれる歯に症状が現れることが多いのですが、患者さんからすれば歯に異常があるように感じることがあるのです。

今回の患者さんはまさにこのケースでした。口全体のレントゲン写真にも左上の上顎洞の部分に若干異常が認められたのです。僕は、患者さんには口の中は全く問題がないこと、歯痛の原因が鼻炎から来ており、蓄膿になっている可能性があることを伝え、処置については耳鼻科主治医に依頼して欲しい。紹介状も書いたので耳鼻科主治医に手渡して欲しいと伝えました。

歯以外が原因で歯痛が起こることはちょくちょくあるものです。患者さんからすれば歯が痛むような感覚なので如何にも歯が原因だと思われることもあるようですが、自己判断することなく、まずはお近くの歯医者を受診して欲しいと思います。


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