歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2009年02月12日(木) 口の中の健診の勧め

先日、うちの歯科医院にある患者さんが来院しました。この患者さんは数年ぶりの来院だったのですが、特に自覚症状もなく、久しぶりに口の中を診て欲しい、定期健診を希望で来院されたのです。

実際に口の中を診てみると、むし歯はなく、歯周病の状態も多少の歯石が付いていることを除けば極めて良好な状態でした。レントゲン写真も撮影しながら、この患者さんの過去のカルテを調べてみると、数年前の前回来院時、ある親知らずを抜歯していたことを思い出しました。

“たしか親知らずの骨の中に埋まっていたよな。抜歯は時間がかかって大変だった。患者さんもよく頑張ってもらったよなあ”なんてことを思いながら、元々親知らずがあった場所も確認しました。まるで何もなかったかのようにきれいに治っていました。レントゲン写真でも確認しましたが、親知らずがあった場所は顎の骨がきれいに再生し、親知らずが埋まっていた痕跡さえ見えなかったくらいでした。
そんな状態をみて僕は安堵するとともに改めてあることを感じました。それは、長期的に経過を診ていくことでいろいろなことが見えてくるということです。

歯の病気は一度かかると患者さん自身で治すことはできません。専門家である歯医者が治療を行ったり、指導をしたりしながらむし歯や歯周病の治療を行っていくものです。抜歯などはその最たる例で、患者さん自身が自分の歯を抜くことはまずは無いことでしょう。
ただ、治療の後はどうかというと、これは患者さんに任されます。せっかくむし歯を治しても患者さんが歯を磨かなければ再びむし歯が起こるリスクは極めて高くなります。歯周病に関しては、きちんと歯磨きを続けないとどんどん進行し、結果的に歯がぐらつき抜けてしまう結果となります。
歯医者の治療は極端に言えばその場限りの治療である側面があります。患者さんの訴えに対して治療を行い、治療が完了すればそれで終了になります。ところが、患者さんの歯や口の中、それ以外の体全体は常に新陳代謝しています。同じように見えていても体の中は常に変化し続けているもの。当然のことながら治療を行った場所も体の新陳代謝の影響を避けることはできません。
患者さんを定期的に診ていくと、過去に歯医者である自分が行なった治療の経過や患者さんの体の変化がよくわかります。変化が体にとって良い方向に変化していれば、歯医者は何もせずに経過を見ていればいいだけ。もし、何か異常があれば状態に応じて適切な治療や指導を施せばいいのです。

このことは患者さんにとってもプラスになるはずです。定期的にかかりつけの歯医者にかかり、自分の口の中を診てもらうことは、自分では自覚できない微妙な体の変化や異常をチェックし、場合によっては治療を受けることができるからです。誰しもいつまでも健康であり続けたいものですが、自分では気を遣っていても自分が気が付かない、気が付き難い場所があるもの。第三者的な存在が必要です。歯や口の中に関しては、まさしくかかりつけ歯医者がそのような第三者的な存在となります。皆さんにおかれましては、是非ともかかりつけの歯医者を一人見つけ、定期的に自分の口の中を見てもらえるようにして欲しいと思います。口の中の健康は結果的に体の健康維持にもつながるものですからね。


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