歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2009年01月19日(月) 五代目の医者

僕自身、歯医者の二代目ですが、なぜ歯医者になったか?と問われれば直ぐに思い当たる理由が無いのです。こんなことを書くと叱られるかもしれませんが、敢えて理由を書くとすれば、“何となく”でしょうか?

親父は自宅の一部を診療所に改装して歯医者を開業していました。僕は幼少の頃から歯医者の環境で育ってきたのです。昼間、自宅では患者さんの声や診療所の機械の音が始終聴こえていたものです。親父が白衣を着て家にいたことも覚えていますし、親父の白衣からは歯医者独特のにおいがしていました。
今から思えば親父が何も言わなくても歯医者という環境が僕の頭を洗脳し、いつの間にか“大きくなったら歯医者になる“という思考回路が形成されていたように思います。

現在、僕には10歳と7歳のチビがいますが、二人とも何気ない会話の中に将来は、歯医者になるということを漏らしていることがあります。僕はチビたちに一度も歯医者になれと言ったことはありませんが、それでも歯医者になるということを言うということは、僕と似たような道を歩む可能性が高いと思います。子供が育つ環境が将来の職業選択を左右することがあるものです。

ところで、昨日、某新聞を読んでいると俳優の佐野史郎のインタビュー記事が掲載されていました。興味深く読んだのですが、この記事の中で佐野史郎は父親が医者の四代目であることや弟が医者の五代目として跡を継いだことなどを語っていました。

医者の五代目。正直言って医者の五代目というのはたいしたものだと思います。僕の周囲を見渡しても、僕の後輩で四代目の歯医者というのはいたのですが、さすがに五代目となるといませんでした。おそらく五代目の始祖というのは江戸時代終わり頃に医者になった人だと思われます。
僕の先輩歯医者の一人が言っていたのですが、医者、歯医者は三代続けば上等で、それ以上続けるのは非常に難しいとのこと。その理由としてはいくつかあるようですが、同じ職業を継げば継ぐほど独特の伝統というものが生じ、伝統の精神的圧力に後世の者が耐えられなくなり、他の職業を選択するようになる説が有力なようです。

僕の子孫がどのようになっていくのか?歯医者を続け、四代目、五代目となっていくのか?それとも否か?今のチビたちが歯医者になるかどうかもわからないままこのようなことを書くのもおかしな話ですが、行く先を僕は三途の川の向こう岸で見守ることになるのでしょうね。


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