2009年01月14日(水) |
遺灰からの貴金属回収について |
昨日、ネットのニュースを見ていると、このようなニュースが流れていました。以下、このニュースからの引用です。
朝日新聞1月13日付 公営火葬場から出る遺灰に含まれた貴金属を自治体が回収して換金したり、遺灰そのものを売却したりして、一部の自治体が収益を収入に組み入れていることが分かった。名古屋市は年間約1千万円、東京都も約300万円の売却益があった。こうした処理は遺族側には知らされていない。 火葬し、収骨されたあとの遺灰には歯の治療や人工骨などで使われた金、銀、パラジウムなどの貴金属が含まれている。 朝日新聞が東京都と政令指定都市など20の自治体に取材したところ、都と名古屋市が遺灰の中から貴金属を回収し、売却していた。新潟、前橋、群馬県高崎の3市は遺灰そのものを業者に売却していた。福岡市は業者が売却した貴金属の収益を市に納めさせることを08年度から始めた。その他の政令指定都市は「回収はしていない」としている。 東京都では、遺灰を引き取った業者が遺灰を(1)貴金属(2)硬貨(3)残骨灰に選別。金とパラジウムは延べ板、銀はパチンコ玉大の球状にした後、都に納めていた。07年度は金700グラム、パラジウム500グラム、銀1900グラムを回収。都は市況を参考に売却し、約320万円の収益を上げた。また、ひつぎには硬貨も入れられることがあるが、都は07年度、計約9万円の硬貨を回収し、収入に組み入れた。 炉数46基と国内最大級の火葬場を抱える名古屋市は07年度、金2キロ、銀7キロをはじめプラチナ、パラジウムなど計12キロの貴金属を回収。金属加工会社などに売却し、1019万円の収益を上げた。 福岡市は、業者が回収した貴金属の売却益を市に納めさせるようにした。07年度の実績だと約340万円の収入になるという。また、前橋、高崎市は遺灰を売却し、07年度に約400万円の収益をそれぞれ得ていた。新潟市は06年度まで売却し、720万円(同年度)の収益があった。 遺灰の所有権をめぐっては、収骨前は遺族の所有、収骨の後は市町村の所有とした1939年の大審院(現在の最高裁)の判決があり、多くの自治体は「遺族が持ち帰らなかった段階で所有権は放棄された」(名古屋市健康福祉局)との立場をとる。遺族側への説明について「時々質問はあるが、こちらから積極的にしていない」(東京都瑞江葬儀所)という。 貴金属の回収や遺灰の売却が始まった時期は、はっきりとしないが、名古屋市は「記録に残っているのは約20年前から」、都は「かなり以前から」という。「売上金を市町村の雑収入にしている」と明記した戦前の大審院の資料もある。 回収する理由について同市の担当者は、遺灰は市の財産で業者が売却して利益を得るのは好ましくないとし、「年間約1千万円の収益があり、回収しないともったいない話。市の財源になっている」と話す。 一方で、貴金属の回収や遺灰の売却をしていない自治体の中には、遺族感情への配慮や所有権の問題などを理由に挙げるところもある。 北九州市は「人体を換金するのは不遜(ふそん)」と市民から反発の声があがり、91年度以降、売却をやめた。市の要綱で「残灰は遺体の延長で敬虔(けいけん)に処理する」と定めている。神戸市は「財産権もからむので、売却しない」としている。
歯医者をしていると、患者さんが被せ歯、差し歯が取れた。入れ歯が割れたということで来院される方がかなりいます。口の中の状況によりますが、これら取れた被せ歯、差し歯をそのまま使うことができず、作り直すことがあります。その際、僕は必ず患者さんに取れた被せ歯、差し歯の処理をどのようにするか確認します。患者さんが自分で持っておきたい希望があれば患者さんに手渡しますし、患者さんが不要だと言われれば、僕は特定の回収箱に回収し、専門業者に処理を委託します。被せ歯、差し歯の貴金属が利用できる場合は再利用する場合もあります。 いずれにせよ、僕は必ず被せ歯、差し歯の処理をどうするかは患者さんに確認を取ることにしています。いくら取れた被せ歯、差し歯でも患者さんの持ち物であり、体の一部であったわけですから。これは当然のことだと思います。
今回のニュースで書かれているように、公営火葬場から出る遺灰の貴金属の中には被せ歯、差し歯、人工骨で利用された貴金属が含まれていることがあるのは事実です。これらの処理については、法的にも判例があるようですし、この判例に則って処理をすれば問題はないはずです。すなわち、遺灰に含まれる貴金属の処理は、火葬をして収骨をして残った貴金属に関しては市町村の所有であることに問題はないはずです。それなのにどうして今回のようにニュースで取り上げて、問題視するような報道のされ方をされるのか、僕は理解できません。人体を換金するのは不遜という意見もあるようですが、それならば、収骨の際、遺族が全て回収するべきなのです。遺族が収骨した後に残された貴金属に関しては、市町村に処理を委託することを遺族が認めたと考えるのが自然ではないかと思いますし、その貴金属を換金するかどうかは行政である市町村の自由だと思うのです。
ただし、遺族の故人に対する感情を考慮すれば、遺族には火葬後に残された故人の貴金属に関して、どのような処理を希望するか?充分な説明と処理を確認する義務が市町村にはあると思います。これは歯医者での取れた差し歯、被せ歯の処理と同じです。遺族に充分な情報提供をし、処理方法を尋ね、処理を委託された場合、市町村は故人の貴金属を換金してもいいのではないかと思います。
ご遺体から換金することには賛否両論あるとは思いますが、僕はご遺体からの換金は遺族の了承さえあれば許されるのではないかと考えます。ほとんどの市町村は赤字に苦しんでいます。限られた税金からの財政をもとに、如何に広く市民に行政サービスを提供するか、日々悩んでいるはずです。遺族の了承が得られた場合、市町村へのご遺体貴金属からの換金は、ご遺体からの貴重な寄付行為として解釈することが許されると思うのです。亡くなった方は戻ってはきませんが、ご遺体の貴金属が残された遺族を含めた多くの市民がより良い生活、行政サービスを受けるために使われるのであれば、故人も納得するのではないかと信じたいのです。
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