歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2008年12月18日(木) 赤ペン添削

今から17年前、僕は初めて学会で発表をしました。当時大学院生だった僕は初めての学会発表で心踊りながらも一体どうして準備をすればいいかわからず、試行錯誤でした。やっとのことで口演用の原稿を書き、指導教官の指導を受けたのですが、原稿はほとんど僕の書いた文字が見えないほど見事に赤字で訂正されて返ってきたのです。それは、まるで赤ペン先生の指導か、それ以上の添削でした。僕自身、決して手を抜いたわけでなく一生懸命時間をかけ、何度も見直して書いた原稿だったのですが、指導教官すれば僕の書いた文章は全てにおいて修正が必要だったようです。
以降、何度か書き直し添削を受けて初めての学会発表をしたのですが、今から思うに非常に得がたい体験をしたように思います。何回もの添削によって学会発表用の原稿がどんなものか頭だけでなく、肌で感じることができたからです。学会発表には独特のひな形、形式みたいなものがあり、この形式からはずれると専門家にとって非常に違和を感じるものなのです。指導教官によって真っ赤な文字で訂正された僕の原稿は、学会発表の形式に慣れるような指導、激励だったように思います。

年は過ぎ、現在、僕は地元歯科医師会の後輩の先生の発表の面倒をみる立場となりました。後輩の先生は初めての発表ということで、準備に余念がありませんでした。まるで17年前の僕のようだったのですが、できあがってきた資料を見て僕は考え込んでしまいました。それは、資料のように見えて全く資料としての体裁が整っていない代物だったからです。一体どこから修正すればいいのか?と言いたくなるような資料。僕は一つ一つ細かく添削していきました。まさに一から教えなければいけないような状態だったのです。僕が訂正をしていった挙句、後輩の資料は真っ赤になりました。完全に赤ペン先生です。まさしく、17年前の僕と同じ状況でした。
おそらく後輩の先生はまだ発表がどんなものかわかっていません。無理もありません。初めての発表ですから。後輩の先生は決して手を抜いたわけではないことは重々承知していますが、いかんせん、資料を読んで僕はしっくりとしませんでした。具体的には、資料に流れ、ストーリーがないのです。後輩の先生は思いつくまま資料を作っていったことは確実ですが、このままでは誰にも相手にされないのは明白でした。そこで、僕が訂正をしていったわけですが、結果的には文面が真っ赤となりました。

これは仕方がなかったかもしれませんが、かつての僕のように少しでも自分がどうして訂正されたのかを理解し、次に繋げられるか、向上できるか努力して欲しいと願わずにはいられません。


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