2008年12月09日(火) |
新しい製品は使用しないとわからない |
歯科治療では様々な器具、材料を用いて治療を行います。歯医者はこれらを取捨選択して用いるわけですが、器具、材料は多種多彩あり、いくつものメーカーが存在します。各社とも自社製品の開発にそれなりの投資をし、PRしています。
先日、某所で歯科治療用の器具、材料の展示、販売を目的とした催しがあり、僕も参加してきました。広大な展示場の中に200社以上の歯科関連企業が出店しており、1日で全てを見るのは難しいくらいの状態でした。いくつかの材料に注目していた僕は、担当者の説明を求め、情報を集めてきました。疑問に思っていたこと、知りたかった情報を得ることができ非常に有意義な催しであったのですが、その一方で、これまで感じていたある思いを一層強く持ちました。それは、新しく開発された器具、材料は実際に使用してみないとわからないということです。
このようなことを書くと患者さんは非常に不安を感じるかもしれません。自分が人体実験にされているかのように思われるかもしれません。 実際のところ、各社は製品を開発するに当たり、人に使用するに際し、何度も実験を加えています。研究室での実験から実際に販売する前にはいくつかの歯科大学、大学歯学部や懇意にしている歯科医院でも実験、検証をしてもらい、問題がないことを確かめてから製品として売り出しています。 ただ、実際の口の中は予想もしないことが起こりえます。一人一人の口の中の状態は、一人一人の顔が異なるのと同様、全く同じものがありません。そのため、慎重に開発してきた製品を用いた結果がどのようになるか予想がつかないところがあるのです。 この点、薬とよく似ています。薬は、多額の費用を投資し、何年も研究を重ね、厚生労働省による厳しい審査を受け、認可を受けたものが使われます。ところが、薬には必ず副作用があります。これは薬の宿命みたいなものです。全ての人に使用できるように慎重に開発された薬でも思わぬ副作用が出現するものなのです。
それでも僕は新しい製品には期待します。なぜなら、従来の製品の中に完璧だと思うものがないからです。使用しているうちに不都合なことやもっと改善すべきことがあるものなのです。そんな不完全な製品を患者さんに使用しているのか!とお叱りを受けるかもしれません。この点は申し訳なく思うのですが、この理由も上記と同じです。患者さんごとに異なる千差万別の口全てに合致した製品が未だに存在しないのが現状だからです。 歯科器具、材料メーカーは少しでも全ての患者さんに使うことができる製品を日々開発しています。少しずつではありますが、その目標に近づいているようには思いますが、なかなか完璧なレベルに達するには時間がかかります。歯医者は常に少しでも患者さんにとってメリットのある、どんな患者さんにでも完璧に使用することができる歯科製品を求めながら、今の時点で最良と思われるものを使用しているのです。
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