2008年10月01日(水) |
歯科治療は土木工事?! |
「歯の治療って土木工事みたいなところがありますね。」
歯の治療を終えて診療室を出て行こうとしていた患者さんがふと漏らした言葉です。
体の臓器の一つである歯。この歯の治療と土木工事と一体どんな関係があるのだろうか?と思われる方がいるかもしれませんが、僕はこの患者さんの指摘に“そうかもしれない”と感じました。
一例を挙げましょう。歯の治療を受けられた方は想像できると思いますが、歯を削る際、口の中にはタービンと呼ばれる高速回転する切削器具を使用します。一分間に30万回転から50万回転するくらい高速に回転するタービンに切削用バーを取り付け、歯に接触させながら歯を削ります。
歯は表面がエナメル質と呼ばれる硬い層で被われています。エナメル質の硬さはどれくらいか?概ねダイヤモンド並みです。歯の表面が非常に硬いことが想像できるのではないでしょうか。 このエナメル質を削る際、タービンに取り付けた切削用バーは非常な高温となります。硬い物を削る際の宿命みたいなものですが、治療の際、この高温は患者さんにとって大変迷惑なものとなります。火傷、痛みが起こりうるのです。これを防ぐには切削部に水を噴きかけながら削る必要があります。高温を冷却する目的で水を放出しながら削る必要があるのです。 そこで困るのが放出された水の後始末です。歯を削っていくうちにタービンから出た水はどんどんと口の中を満たしていきます。あっという間に口の中全体を満たすくらいの量の水がでるのです。歯科治療では、これら水を吸い出すために診療台には必ずバキュームと呼ばれる吸引装置が付属しています。歯を削るために放出された水を吸い取りながら歯を削っていく。これが一種の歯科治療なのです。
この状況、何か工事現場でも似ています。例えば、ビルの解体現場。ビルを解体するのに大きなドリル状の切削器具を用いることがありますが、その際、水を放出しながら削ることが多いものです。この水は冷却の意味と舞い上がるほこりを発散させない意味合いがあります。
歯の治療というと何か特殊なことを行っているようなイメージがありますが、実際のところは実に土木工事的なことを行っているとも言えるもの。冒頭の患者さんの指摘はなかなかに歯科治療の本質を言い当てている、言いえて妙な感じがしました。
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