歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2008年09月08日(月) 歯医者はワーキングプア

先日、地元歯科医師会である会合があり出席してきました。会合にはいくつかの議案があったのですが、中に歯科界を取り巻く環境に関する議案がありました。その際、発言者の一人がこのようなことを言われたのです。

「最近、某高校で大学への受験指導の際、配布された資料を見る機会がありました。社会の様々な業界の将来性、発展性を図示した資料だったのです。中には歯科業界もあったのですが、歯科業界の位置づけを見て私は愕然としました。それは、歯科業界には将来性がなく、発展も見込めない。仮に歯科業界人になったとしても、ワーキングプアになるばかりとの評価だったのです。」

受験業界の指摘は非常に痛い所を突いていると感じました。歯科業界の将来が決して明るくないことは僕も認めるところです。

現在、10万人近い歯科医師がいるなか、そのほとんどが歯科診療所で働く歯科医師です。歯科診療所は67000診療所近くあり、現在も増え続けています。全国各地、どこでも見ることができるコンビニエンスストアの1.4倍、いやそれ以上あると言われる歯科医院。

一方、日本国民全体に占める1年間の歯科医療費は2兆5千億円余り。1年間の国民医療費がほぼ33兆円で、毎年増加(前年度は若干抑制されたようですが)しつつある中、歯科医療費は2兆5千億円余りと変化がありません。ということは、毎年決まった歯科医療費を毎年増え続けている開業歯科医院が分け合っている状況なのです。今後、歯科医療費が増えることは考えにくいだけに、歯科業界で働くとしても将来的な展望がないと指摘されても仕方がないところがあります。そういった意味では受験業界が歯科業界に対して、ワーキングプア業界であると評することに関して否定することはできません。

残念なことに現在の歯科医師過剰というのは国の政策の失敗です。かつて歯科医師不足と言われていた時代に歯科医師数を満たすために全国各地に必要以上の歯科医師要請大学を数多く作ることを認可したのが国です。その結果、歯科医師数が過剰となったにも関わらず有効な政策変更を行わずそのまま放置した。最近になり、ようやく国は歯科医師国家試験の合格基準を上げたり、全国の歯科大学、歯学部の定員を更に下げるよう圧力をかけるようにしながら歯科医師数を減らそうとしていますが、その効果が現れるのは何年も先のこと。国の政策失敗のつけは、結局のところ歯科医師自身が被らなければならないというなんとも皮肉な結果となっています。

しかしながら、現在、歯科業界で働いている者としては、正直言って面白くありません。歯科業界だけに限りませんが、どんな業界でもベテランから若手へ担い手が移っていくもの。現役世代の仕事ぶりを見ながら後を追いかけてくる若い世代がいる。このこと業界の活性化を図り、強いては業界の持続の活力となるのです。歯科業界もそうなのです。歯科業界を夢見る人たちがいることにより、現在、歯科業界で歯を食いしばりながら働いている人たちも先に希望が持てるというもの。歯科業界の将来に希望が持てるよう、今現役で働いている僕のような歯医者がもっと知恵を出し合い、若い人に魅力が持てるような業界にしていきたい。僕は切に願っています。いつまでも歯科業界がワーキングプアと言われないために。難しいことですが・・・。


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