2008年09月09日(火) |
歯科大生わいせつ事件について |
僕は某所で歯医者稼業をしていますが、いくつか心がけていることがあります。それは、むやみに歯科業界や他の歯科医のことを批判しないことです。きちんとした情報、正確な情報を知りえた立場であるならば、僕は批判をすることは厭わないのですが、伝え聞く歯科業界や歯医者に対する話には非常に不正確な情報が多いのが常です。不確実な情報に基づいた言動というのは事態を混乱させるだけで、事の真実を直視することからは結果的に遠ざかるのではないだろうか?こんな思いから、僕はこの“歯医者さんの一服”ではほとんど自分の業界の批判をしたことはありません。
と、書きながら今日は僕がモットーとしていることをくつがえすかのような内容を書きます。昨日流れたこのニュース。僕は安易にこのニュースを信じるつもりはありませんが、これが事実であるとしたならば、とんでもないことだと感じたのです。
女性にわいせつな行為をしたとして、警視庁本富士署が、東京医科歯科大(東京都文京区)歯学部6年の川野哲平容疑者(28)(同区千石)を準強制わいせつの疑いで逮捕していたことがわかった。 同署副署長によると、川野容疑者は今年7月4日と19日、同大の研究棟21階の非常階段踊り場で、インターネット上のサイトを通じて知り合った女子大生(20)に、「(歯を白くする)ホワイトニングの薬は劇薬で、がんに影響がある。乳がんの検査をするので上半身裸になって下さい」と偽り、衣服を脱がせて胸を触るなどした疑い。 川野容疑者は、サイトに「ホワイトニングの研究をしている歯科医です。無料でホワイトニングをします」と書き込んでいたといい、「肩をもんだだけ」と否認しているという。
まだ歯医者になっていない歯科大学生が自分の身分を偽り、自らが臨床実習を受けている大学病院に全く見ず知らずの女子大生を呼び、下着を脱がして触診をする。歯医者として信じられない話です。 歯医者は歯や口の中を治療する仕事ではありますが、歯や口も体の一部です。僕は患者さんを診察する際、患者さんの体や動きなどを観察しますし、場合によっては体のことを問診したり、血圧を測ったりすることがあります。状況によっては聴診器で聴診をすることもあります。この場合、患者さんが女性の場合は特に女性スタッフを同席させ、胸や背中を聴診することもあります。ただし、このようなことは非常にまれなことではありますが・・・。
このニュースによれば、容疑者は診療室ではない階段の踊り場で上半身裸になるように指示したといいます。これがもし本当であれば、言語道断。歯科医師として破廉恥極まりない行為です。しかも、自分が歯科医ではない歯科大学生でありながら、インターネット上で歯科医と偽り、無料でホワイトニングをすると書き込んでいたとのこと。ホワイトニングが無料でできるわけがないのです。それなりの機材、材料、器具、治療経験などがないとできないのがホワイトニング。通常は保険治療は利かず、自費治療になるホワイトニング。それを無料でするということ事態、非常におかしな話ではあり、歯医者であれば誰もが首をかしげる話です。
ホワイトニングの薬は劇薬だからガンに影響があるというのは全くのうそです。そもそもガンになるような可能性のある薬はホワイトニング用の薬物として国は認めません。日本では未承認で海外で使用されるホワイトニング用薬物もガンになるような可能性のある薬は用いていないのが普通です。 しかも、ガンの可能性があるから乳癌の検査をする。この言動の跳躍ぶりには僕は全くついていけません。
この歯科大学生は容疑を否認しているとのこと。肩を揉んだだけだと言っているのだとか。これもおかしい。治療で肩を揉むようなことは通常は考えられません。特に、女性患者さんの場合、変な誤解を与えかねませんから。
僕自身、何が本当なのか見極めたい。このニュースは個人的に追っていきたいと考えていますが、もしこの事件が本当だとすれば、この歯科大学生は歯科医になる資格はありません。昨日の日記にも書きましたが、ただでさえ歯科業界の現状は非常に苦しいものがあるのです。そのような中、歯科大学生一人の破廉恥な行いが歯科業界に対するイメージを更に悪くする可能性が高いのです。歯医者の一人として、非常に情けなく、怒りをどこにぶつけていいかわからない今日この頃です。
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