2008年08月21日(木) |
遺伝のいたずら 過剰歯 |
先日、ある患者さんのレントゲン写真を撮影してみたのですが、僕は一瞬目を疑いました。それは、前歯にあるべき歯が一本多かったからです。通常、前歯は真ん中の歯である中切歯、その隣の歯である側切歯、それから犬歯の三種類からなります。上下左右合わせて合計12本あるのですが、この患者さんに関しては上の左の前歯に一本多く歯があったのです。こうした歯は過剰歯と呼ばれます。読んで字の如く、通常の歯数よりも多く発生した歯のことで、奥歯や上の前歯に見られることがあります。 どうしてこのような過剰歯ができるのか?理由はわかっていません。歯科関係の文献によれば、いくつか原因が挙がっていますが、どうも遺伝による影響が強いようです。過剰歯は一種の遺伝のいたずらかもしれません。
この過剰歯は何も支障がなければそのまま経過を診ていくのですが、歯並びに支障が生じたり、腫れや痛みが生じた場合は抜歯の対象となります。この患者さんの場合、数日前から痛みが生じたということでした。レントゲン写真で確認すると、このまま放置すると隣の健康な歯に悪影響がでることが考えられました。僕は患者さんに説明して抜歯を勧め、患者さんの了承を得てから抜歯することにしました。 幸い、抜歯は比較的短時間で終わったのですが、一部粘膜を剥離して抜歯したため、縫合糸による縫合で傷を寄せなければなりませんでした。
このような遺伝の悪戯による歯の影響というのは時々あります。過剰歯とは逆の場合、先天欠如歯なんて場合もあります。これは上の前歯や下の小臼歯、最近では親知らずなどがない場合も見られます。 また、いつまで経っても永久歯が生えてこないため、レントゲン写真撮影してみると後続の永久歯がないような場合も少なからずあります。このような場合、少しでも長く乳歯を保つようにしますが、乳歯を抜歯せざるを得なかった場合は、入れ歯かブリッジ、自費診療であればインプラントという方法で永久歯が生えてこなかったスペースを埋めるようにしないといけません。そうしないと、歯並び、噛み合わせ狂ってしまう可能性があるからです。 遺伝のいたずらは気まぐれですが、たまたま遺伝のいたずらに引っかかった人はアンラッキーとしかいいようがありません。しかし、適切な歯科処置で遺伝のいたずらによる悪影響を防止することは可能なのです。
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