歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2008年06月06日(金) 学校歯科検診で見る格差社会の兆し

ご存知の方もいるとは思いますが、6月4日から6月10日までの1週間は歯の衛生週間です。かつて6月4日は語呂合わせから“むし歯の日”とか“むし歯予防デー”など言われていましたが、今では6月4日から1週間を歯の衛生週間と名づけて、歯や口の健康に対する啓蒙、啓発活動が全国各地で行われています。僕の地元歯科医師会でも今週末には市民向けの健康講座を開催したり、来週初めには歯の無料健康診断、相談が行われます。

ところで、全国各地の学校では定期健康診断が行われています。これは学校保健法という法律により、学校の生徒と教師の定期健康診断を毎年6月30日までに行わないといけない決まりがあるからです。内科、眼科、耳鼻科といった検診と同様歯科検診も行われます。先週、僕も母校でもある地元小学校で恒例の歯科検診がありました。
検診を終えた正直な感想ですが、年々むし歯の数が更に減っていると感じました。歯科検診ではむし歯のことを“C”と言って判定しますが、今回の検診では“C”と口から発する機会が少なかったように思うのです。

このことは大規模調査のデータからも裏づけがあります。六年に一度、厚生労働省が全国で行う歯科疾患実態調査という調査がありますが、12歳におけるむし歯経験歯数は、昭和62年では4.9本だったのに対し、平成17年では1.7本となっています。この20年間で12歳児のむし歯はほぼ3分の1になっているのです。

どうしてこれだけむし歯の数が減少してきたか?これはいくつかの理由があるでしょうが、歯や口の中の健康維持に関心を持つ親御さんが増え、自分たちの子供達のむし歯予防を実践していることが大きな要因であることは間違いありません。かつて子供たちのむし歯はあって当たり前という認識が強かったものですが、今ではむし歯を予防ができて当たり前という意識が世の中にかなり浸透してきているように思います。

その一方、むし歯が放置されている子供は、数は限られているものの、非常に目立ちます。なぜなら、これら子供は全く治療をせず、そのまま放置されているむし歯の数が尋常ではないからです。極端な話、生えてきた永久歯以外のほとんどの乳歯がむし歯であることも珍しくありません。これは、間違いなく保護者に責任があります。

どうして子供のむし歯を放置しているのか?経済的な理由が考えられるかもしれませんが、義務教育において全国各地の公立学校では何らかの形で治療を補助する制度があります。むし歯の治療も治療の補助対象となる病気の一つで、保護者は全く自己負担することなく、場合によってはわずかな額を負担することもあるかもしれませんが、自治体かの医療補助が受けられるはずです。
そんな医療補助があるにも関わらず、子供のむし歯の治療を放置するのは、やはり保護者や家庭に何らかの事情があると判断せざるをえないのです。

これまでは学校の定期健康診断というのは、多くの生徒たちを対象とした集団指導の意味合いが濃かったのですが、今の定期健康診断では、保護者や家庭の事情を考慮した、個別指導を行う必要が生じてきたように思えてなりません。物事は時代とともに変化、変貌するものですが、学校の定期健康診断も時代の流れとともに変わりつつあると言えるでしょう。


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