| 2008年05月21日(水) |
赤ちゃんポスト一周年で感じたこと |
昨日、地元歯科医師会の夜の会合へ行く車の中でラジオを聴いていると、昨年5月に熊本県熊本市の慈恵病院に設けられた赤ちゃんポストに関するニュースが流れていました。赤ちゃんポストが設置されて一年経過したということで、熊本市は赤ちゃんポストに預けられた子供の状況を公表しました。以下、このことを報じた朝日新聞からの引用です。
熊本市の慈恵病院が「こうのとりのゆりかご」の名称で運用する赤ちゃんポストについて、熊本市は20日、昨年5月の運用開始から今年3月末までに預けられた子の人数や性別、健康状態、その後の対応などを初めて公表した。託されたのは17人で、男児13人、女児4人。手紙や親からの連絡などで9人の身元が判明した。関東や中部、中国から各2人、九州は3人で、全員が熊本県外だった。それぞれ、出身地の児童相談所に保護された。身元がわからない残り8人は幸山政史・熊本市長が命名、熊本市で戸籍を作り、県内で育てられている。 市や病院は運用開始以来、プライバシー保護などを理由に、預け入れの有無や人数など一切を発表してこなかったが、10日に運用開始1年を迎え「より多くの人がこの問題を考えるきっかけになるように」と公開した。 預け入れ時、生後1カ月未満の新生児だったとみられるのは14人、1歳未満の乳児が2人、1歳以上の幼児が1人。治療が必要とされた子が2人いたが、病状などは明らかにしなかった。新生児のうち体重1500グラム未満の極低体重出生児はおらず、1500〜2500グラムの低体重出生児が2人。12人は2500グラム以上。障害のある子もいたとみられるが、障害児の有無については明かさなかった。 13人の傍らに手紙やおもちゃなどが残されていた。手紙には「すみません」「育てられません」とだけ書かれたものや、生年月日や名前など数枚にわたり詳しくつづられたものも。会見した幸山市長は「つらい思いがうかがえるものもあった」と語った。 親などが事後に電話やメールなどで病院に連絡してきたのが5件で、うち1件は病院などとやりとり後、親が子どもを引き取りに来ていた。 当初は住所の手がかりがなかった9人について、熊本市が新たに戸籍を作ったが、うち1人は後に身元が判明し、熊本市の戸籍は破棄された。身元がわかった9人については、出身地での出生届が確認されたり新たに出されたりしたとみられる。 市は昨年9月、ポストの利用状況を短期的に検証する会議を設置。「運用1年」を機に、検証会議が検討し、障害の有無や手紙の内容など「個人特定につながる」ものをのぞき、公表に踏み切った。
赤ちゃんポストの設置に対しては設置当初から賛否両論がありましたが、昨日聴いたラジオ番組の中でも赤ちゃんポストに対する検証と題して話がされていました。この検証の話の中で僕が非常に気になることがありました。それは赤ちゃんポストに預けられた子供の数が多いか、少ないかということです。 一年間で17人の子供が赤ちゃんポストに預けられたそうですが、この数字を多いとみるか、少ないとみるかということで、その道の専門家と称する人が意見を述べていたのですが、僕は話を聴いていて非常に腹立たしく思いました。なぜなら、一年間に預けられた子供の数の多さ、少なさを議論すること自体が愚問ではないかと感じたからです。
生まれてくる子供には全く罪はありません。どんな事情があるにせよ、子供は生を受け、この世に出てきた大切な存在です。どんな人でも親は必ず存在し、生を受けた瞬間があるのです。生まれてくる子供を評価することは全くナンセンスなことで、どんな子供も将来に可能性があり、我々の未来を背負う、頼もしい存在であるはずです。 本来なら生まれてきた子供を親は手放したりしてはいけないはず。それが手放さないといけないということは余程の事情があることだとは思いますが、親の事情がどうであれ生まれてきた子供にとってこれほど不幸なことはありません。実の親に捨てられるわけですから。生まれもって親がいないという不幸。いろんな意見があるとは思いますが、親が子供を捨てることほどむごいことはないと思います。
本来なら赤ちゃんポストなるものはあってはならないもののはず。それが存在し、機能するということは悲しむべきことではないでしょうか?一人でも赤ちゃんポストに子供が預けられたのであれば、それだけでも悲しまなければならないことのはずなのに、一年間で17人の子供が預けられたことを多い、少ないと論ずることに僕は非常な違和感を覚えました。預けられた子供の数を議論するのではなく、赤ちゃんポストそのものがこの世から必要なくなるような対策、政策をもっと皆が考えるべきではないか? 赤ちゃんポストに預けられた子供の数の多さ、少なさを話すラジオを聴き、子供を持つ親として思わず一言言いたくなってしまった、歯医者そうさんでした。
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