| 2008年05月13日(火) |
COって一体何のこと? |
「先生、学校の歯科検診でCOって言われたのですけど、COって一体何ですか?」
最近、うちの歯科医院に来院したある中学生からの質問です。話を聞いてみると、先日学校で歯科検診があったそうで、その際、検診担当医が自分の奥歯をみて“CO”と言っていたのが耳に止まったのだとか。”C”であればむし歯であり、”斜線”と判定されれば健康な歯であることは知っていたそうですが、COと言われて何のことかよくわからず、僕に尋ねてきたというわけです。
何だかかつてあった人気テレビドラマのタイトルみたいなCOですが、このCOって一体何でしょう?
学校に通う生徒の健康管理に関して法律があります。学校保健法という法律なのですが、この法律により、幼稚園から小学校、中学校、高校にいたるまでの園児、生徒は毎年6月30日までに各種健康診断を受けなければなりません。これを定期健康診断といいます。 具体的には
身長、体重、座高 栄養状態 脊柱および胸郭の疾患および以上の有無 視力および聴力 目の疾患および異常の有無 耳鼻咽頭疾患および皮膚疾患の有無 結核の有無 心臓の疾患および異常の有無 尿 寄生虫卵の有無 歯および口腔の疾患および異常の有無 その他の疾患および異常の有無
が調べられます。 歯科検診ではむし歯や歯周病のチェック、歯並びやかみ合わせ、顎関節の状態などが調べられるわけですが、何といっても最も注意して検診するのがむし歯です。 かつて、むし歯であれば削って詰める、被せるという治療が一般的でした。歯の予防に対する知識が充分に社会に浸透していなかったため、むし歯に侵される子供がたくさんいたのです。ある人などはむし歯の洪水の時代と名づけたものですが、言い得て妙とでもいう時代がかつてあったのです。 歯科検診でもこのことが前提にあり、少しでもむし歯になる可能性のある歯に対してはCと判定し、治療勧告書を出して早期の治療を促すようにしていたのです。
ところが、今ではむし歯の数は減少してきました。5年に一度全国レベルで調査される歯科疾患調査に歯科疾患実態調査という調査があります。この調査によれば、12歳児のむし歯経験歯数、すなわち、むし歯やかつてむし歯であったものの治療をした歯の数(永久歯)は、昭和62年では4.9本でしたが、平成17年では1.7本と減ってきています。20年近くの間に12歳児の永久歯のむし歯はほぼ3分の1に減少していることがわかると思います。これは歯の健康に対する関心が深まり、予防に対する意識の高さ、実践による影響であることは間違いありません。
ところで、最近の歯の耐久性に関する研究で、歯はなるべく削らない方が耐久性があることが実証されてきました。なるべく削らないといってもむし歯になってしまえば削らざるをえないのが実情ですが、むし歯になりかけの歯の場合、適切に予防をしておけば、むし歯が進行せず、場合によってはむし歯が治っていくケースも見られることがわかってきたのです。 未来のある子供の場合、なるべく歯を長持ちさせるためには日頃からの歯の予防が欠かせませんが、運悪くむし歯になりかけてしまった場合、適切なブラッシング指導や食事方法、生活習慣の見直し、フッ素を利用した歯の強度をたかめる治療などを併用すれば、必要以上に歯を削るケースが減少するのです。
これらのことを学校検診に取り入れた成果がCOという判定なのです。COというのはCaries Observationの略です。直訳すればむし歯観察とでも書くべきでしょうか。むし歯と判定するまでには至らない状態ではあるが、時間経過とともにむし歯に発展する可能性が高い歯のことをCOと言います。もっと平たく言えば、経過観察を必要とするむし歯になりかけの歯のことです。 むし歯になりかけてはいるものの、本人の自覚と予防処置、定期的な検診をしていくことにより、不必要なむし歯処置を避け、歯を削らないことで歯の耐久性が増し、結果として健康な歯を維持し、健康な体を作る。 COというのは何もしないということではなく、注意深く見守りながら歯の健康を維持する、積極的な経過観察処置であるのです。
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