2008年04月21日(月) |
歯医者はキャンセル料が取れない |
長年歯医者をやっていると時にはどうしても感情的になってしまうこともあるものです。こちらに落ち度が全くない場合、怒りを何処に向ければいいのか悩んでしまうこともあります。
そんな例の一つがキャンセル問題です。多くの歯科医院では治療時間の確保のために予約制を敷いています。突然の歯痛、腫れ、入れ歯のトラブル、歯の破折といった場合は予約外で診療することになりますが、何回も治療がかかる場合、患者さんと相談の上で一定の日、時間に治療時間を確保し、治療を行うのが予約です。 この予約に対し、やむを得ずキャンセルをしなければいけないケースがあります。歯医者の都合でキャンセルしなければいけないケースもありますが、多くが患者さんの都合によるキャンセルです。誰しも予想外の、予定外の出来事があるものです。仕事上の問題、家庭の問題、体調の調子等、当初予定していたことをキャンセルしなければいけないことはあるもの。歯科治療の予約をしていてもそうしたキャンセルはありえます。僕もキャンセル自体は仕方のないことだと思いますし、理由がはっきりしていれば十二分に理解しているつもりです。事前に連絡があれば、当該患者さんの予約時間を他の患者さんの治療枠に振向けることが可能です。しかしながら、ドタキャンであったり、無断キャンセルであった場合、歯医者としては非常に困惑します。単に予定していた治療時間が無駄になっているだけではないからです。予定した治療時間にはそれなりの経費が掛かっているのです。治療時間と治療にかかる経費は、すべて治療費で賄われるわけですが、これら治療に関わる経費である人件費、光熱費、材料費、技工料などは、患者さんのドタキャン、無断キャンセルによって全て歯医者の持ち出しとなるのです。これは開業歯医者であれば誰でも一度は悩んでいる問題なわけで、歯医者に損害を与えることになるのです。
ところで、多くの業界ではキャンセル料を請求している場合があります。様々な商品の売買や旅行経費等々、一般社会ではキャンセル料といった概念が契約約款に記載されていることが多いもの。 以前、歯医者仲間同士で、ドタキャン、無断キャンセルをした患者さんに対してキャンセル料を請求することができるか話をしたことがあります。その際、いろいろと調べた限りでは、保険診療においては契約概念がはっきりとしたものではないため、キャンセル料を請求することは困難であるようです。また、厚生労働省もこの立場に立っており、キャンセルが生じた場合のキャンセル料請求には否定的な考えをしているのだとか。
結局のところ、医療、特に保険診療においては、キャンセル料を患者さんに請求することは現時点では難しい、はっきりいえば無理であることのようです。ということは、患者さんのドタキャン、無断キャンセルによって生じた損害は歯医者自らが被らなければならないということです。 ほとんどの患者さんはきちんと通院されますし、キャンセルせざるをえないような場合には事前に連絡を入れてくれるのですが、ごく一部の患者さんに非常に意図的なドタキャン、無断キャンセルがあるのが事実です。なるべくこうしたことは行って欲しいのですが、時には患者さんにドタキャン、無断キャンセルをされると、歯医者は感情的になったり、むなしく感じたりすることもあるのです。
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