2008年04月15日(火) |
アルコールを止められない患者 |
毎日患者さんの治療をしていると、麻酔の注射をして膿を出したり抜歯をしたりすることがあります。これら処置は専門的には観血処置と言われるものです。観血とは読んで字の如く、“血を観る”ということ。出血を伴う処置であるということです。
出血するという状態は通常の体の状態ではありません。何らかの傷が生じて体の中の血管が裂けて血が体外へ出て行く状態を指します。明らかに異常な状態であるわけです。 また、体の中は菌が無い無菌状態です。もちろん、内臓の一部や粘膜、皮膚には雑菌が繁殖しているものですが、ほとんどの体内は菌が存在しません。ところが、体に傷がつき出血すると、出血部位から雑菌が進入する可能性があります。 幸い、人間には出血しても止血できるような体のメカニズムが備わっています。軽い怪我くらいの傷であれば知らない間に止血されるものです。また、体には体外からの異物に対してこれらをやっつける免疫が備わっています。一時的に出血部位から菌が血液に入り込んだとしても免疫の働きによって菌が殺菌されるものなのです。
口の中の治療の場合、観血処置の一つである抜歯では、自然に止血しない場合があるのです。このような場合、傷口にガーゼを当てて強く噛んだり圧迫する、場合によっては傷口を縫合糸で縫合したり止血材を抜歯痕に填入したりします。口の中は雑菌の宝庫ともいってもいいくらいの多数の雑菌がいます。口の中で出血すればこれら雑菌が血液に入り込んでしまう可能性もあるのです。 そのため、抜歯を行った後は必ずといっていいほど、患者さんには抗生物質を服用してもらいます。これは免疫で対応しきれない血液に中に入り込んだ雑菌を殺すために、免疫を補助するために飲んでもらう薬なのです。その他にも炎症止めの薬や鎮痛剤が処方され飲んでもらうこともあるのですが、口の中の観血処置には薬は欠かせないといっても過言ではないでしょう。
この薬ですが、薬を服用してもらっている間にはアルコールは控えてもらいます。その理由はアルコールを服用することによって薬の薬効以外に思わぬ副作用が出る可能性があるためです。例えば、下痢が生じたり全身に湿疹、蕁麻疹が現れたりすることもあるのです。
ところが、アルコールについて患者さんの中にはどうしても禁酒できない人たちが少なからずいます。そんな患者さんからは必ずといっていいほど
「今日は酒を飲んでいいですか?」 と質問を受けます。 僕は患者さんの体のことを考えると、薬を飲んでいる間、アルコールは避けて欲しいと願います。薬を出す期間はケースバイケースですが、歯科治療の場合は3日間前後であることが多いもの。少なくともこの服用期間中はアルコールを控えることができないものかと思うのですが、アルコールが好きな方はなかなか休肝日を作ることが苦手なようです。患者さんの中には、僕に黙って薬を飲みながらアルコールを飲んでいる人もいるようです。
僕は歯医者として薬を処方し服用している間はアルコールを飲まないで欲しいと必ず言います。しかしながら、僕の言うことを理解し実行するのは患者さんです。患者さんがどうしてもアルコールを止められないというのであれば僕はどうすることもできないのが現状ですが、薬とアルコールを一緒に飲んで何か体に異常が生じたとしても、僕は責任を取ることはできません。こればかりは患者さんの自己責任ということになるでしょうね。
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