歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2008年04月09日(水) 歯医者の味見

僕は患者さんに治療をする際、いろいろと声を掛けることを心がけています。ただでさえ治療に対し不安に感じている患者さんです。かなりの精神的ストレス、緊張があるものです。そんな精神状態の時に何の心の準備もなく、自分が思いもしなかったことを口の中で行うことは患者さんにとって恐怖心さえ感じることがあるのではないかと思うのです。
少しでも患者さんの不安と緊張を緩和するため、僕は事前に何をするか説明するよう心がけています。

この説明ですが、僕はなるべく自分の実体験に基づいて説明するようにしています。
例えば、入れ歯の修理を口の中で行うとします。この際、用いるレジンと呼ばれるプラスチックですが、当初は液と粉を混ぜ合わせた泥上のものです。時間が経過すると共に固まっていくわけですが、固まる最中、物性上発熱します。口の中に入れていると熱く感じることがあるのです。また、このレジンは非常に化学的な刺激があります。口では表現しにくい刺激なのですが、決して良い味とはいえない刺激です。入れ歯を修理を行う患者さんには、必ずこのことを伝えると、ほとんどの患者さんは我慢してくれます。

先日、ある患者さんに表面麻酔薬を塗布する前、僕は説明しました。

「この薬はイチゴの味がします。少し苦めのイチゴの味なのですが、甘いと思っていると段々と痺れてきますから注意して下さいね。」

治療終了後、その日行った治療の説明をしたのですが、その患者さんは僕に尋ねてきました。

「最初に塗られた薬は先生が言われていたとおり苦いイチゴの味がしましたよ。先生はよくわかっていますね。自分で試されたことがあるのですか?」
「そうです。僕は患者さんに使用する材料、薬は前もって必ず自分の口の中で試すことにしています。どんな味がするのか、どんな物性があるのか等を前もって体験しておくんです。そうすることで、患者さんに使用する際、何に注意をすればよいか、身をもって知ることができますからね。今回使用した表面麻酔薬もそんな薬の一つだったのですよ。自分の舌先で舐めているとイチゴの味がするけども、少し苦いなあと感じているうちに30秒くらいすると舌先が痺れてきたのですよ。“しまった!”と思ったのも後の祭り。結局10分程度麻痺していて、話そうとしていても何だか舌がしびれて舌足らずな話し方になってしまいましたよ。」

治療で用いる薬や材料の物性などは知識としては知っているつもりですが、いざ自分で使用してみると思わぬアクシデント、失敗があるものです。自分で失敗する分に関しては自分で責任を取れば良いわけですから気分的には楽ですが、時には体を張って仕事をしているなあと感じる時もありますね。


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