歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2008年04月07日(月) 歯痛収監者に一刻も早い治療を!

歯痛というのは体で感じる痛みの中でもトップ3に入る強烈な痛みの一つです。僕自身は歯痛の経験はほとんどありませんが、歯医者として17年仕事をしてきて、歯痛で苦しむ患者さんと接していると、皆さん一様に歯痛の痛さを訴えられます。歯痛を我慢しようといろいろと自分なりに試行錯誤するものの、痛みは治まらない。歯医者嫌いだが、どうしても歯痛を治して欲しい。そんな思いで歯科医院に駆け込む患者さんは少なくないのが現状です。
さて、先週末、このようなニュースが流れていました。
以下、この記事からの引用です。(朝日新聞2008年04月05日)

法務省の西日本入国管理センター(大阪府茨木市、収容者数約100人)で3月19日、収容中の外国人が歯痛の治療を求めて抗議のハンガーストライキを呼びかけたのをきっかけに、入国警備官らと収容者の計数十人がもみ合いになる騒動が起きていたことがわかった。米国人男性1人と警備官3人が首などに軽いけがをした。センターはもみ合いがあったことを認めたうえで、「職員が暴力を振るった事実はない」としている。
 仮放免された収容者や支援者らによると、この日までにモロッコやバングラデシュ国籍の男性計5人が歯痛を訴えた。モロッコ人男性は3カ月前から外部の歯科医院での治療を求めたが認められず、右ほおが腫れていた。センターには内科医しか常勤しておらず、痛み止めを処方されただけだった。
 午前11時過ぎ、モロッコ人男性ら5人がほかの収容者にハンストを呼びかけ、計約35人が参加した。廊下に座り込み、センター側との話し合いを要求。センター側は「部屋に戻らなければ応じない」とし、収容者は座り込みを続けた。午後2時過ぎにヘルメットと革手袋を装着した警備官や職員計25人が現れ、米国人男性の肩をつかんで部屋に戻そうとしたことをきっかけに小競り合いになったという。
 双方合わせて数十人が約20分もみ合った後、警備官が収容者を制圧した。センター側はその2日後、モロッコ人男性ら2人を歯科医院に連れて行ったという。
 一方、センター総務課は、騒動の直接のきっかけは収容者の1人が禁煙の廊下でたばこを吸って警備官に注意されたことだった、と説明。このトラブルに合わせて、外部の歯科医院での受診を求めていた収容者を含む25人が待遇改善を求めて座り込みを始めたとしている。
 もみ合いになった経緯については、部屋に帰るよう促した職員に収容者8人が体当たりしたり、殴りかかったりしたためだと説明している。制圧後に昼食を出し、「ハンストにはなっていない」という。法務省入国管理局によると、待遇改善を求めるハンストは各地のセンターでたびたびあるが、これだけ大規模な騒動につながったのはまれという。
 センターは外部病院での歯科治療について、収容者から申し出があれば1週間をめどに受診させるが、付き添いの警備官の都合で2〜3週間後になることもある、としている。モロッコ人男性のケースについて、センター総務課は「個別の事例に答える必要はない」としている。


このニュースの信憑性がどれくらいなのかは判断がつきかねますが、二つの点を考えなくてはならないと思います。
一つは、入国管理センターに収監されているような外国人は歯の状態が芳しくない可能性が極めて高いということです。入国管理センターに収監されるような外国人を差別するわけではありませんが、彼ら彼女らが入国管理センターへ収監される理由の一つは、正規の手続きを取らなかったり、犯罪歴や前歴がある可能性が高いものと思われます。まともな生活を営んでいない外国人である可能性が高いのではないかと推測します。
歯の健康状態というのは、生活習慣に左右されるものです。規則正しい生活を過ごせば歯というものはさほど酷くはなりにくいものですが、歯の健康管理を二の次にしたり、無関心であればあるほど歯の状態は酷くなるのです。
入管管理センターに収監されるような外国人の場合、歯に多くの問題を抱えているようなケースが多いのではないかと思います。何かのことがきっかけで歯痛が起こったり、歯肉や顔面が腫れるような可能性は充分に考えられることです。
ところで、入国管理センターには歯科医師は常勤していないとのこと。内科医しか常勤していないそうですが、残念ながら内科医は口の中や歯のことは知識としては知っていても、いざ治療をしようとしても痛み止めや抗生物質程度しか出すことができず、実際の歯の治療を施せることはできないのです。収監者の口の中や歯にトラブルが生じた場合、入国管理センターでは対処できないのが現状なのです。

入国管理センターでは歯にトラブルが生じれば申し出れば歯の治療を受けられるとコメントしているようですが、付き添いの警護官の都合で治療が2〜3週間後になるとのこと。
これは非常に大きな問題だと思うのです。
先に書いたように歯痛というのは痛みの中でも非常につらい痛みの一つです。我慢しようにも我慢できない痛さなのです。常に拷問されているような苦痛を伴うと言っても過言ではありません。歯痛を感じれば一刻も早く適切な処置を受けなければいけないのです。ところが、入国管理センターでは歯痛の場合、場合によっては2〜3週間後に治療となる可能性があるということをコメントしています。これでは歯痛に悶絶してしまいます。歯痛で苦しむ収監外国人がハンガーストライキをしたというのは、彼ら彼女らの真摯な訴えだと僕は感じるのです。

確かに収監している外国人を歯の治療に連れて行くには警護の問題が多々あることでしょう。治療費の問題もあることでしょう。治療費は公費となりますから。けれども、収監している外国人にも人権があります。彼ら彼女らが歯痛で苦しんでいるなら、直ぐにでも歯痛だけは止めるような処置、歯科医による応急処置を施す必要がありますし、そのための態勢作りが必要ではないでしょうか。


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