2008年04月04日(金) |
確実に過剰歯科医を減らす方法 |
昨日、某歯科業界新聞を見ていると今年の歯科医師国家試験合格率が掲載されていました。3月27日に厚生労働省から発表された合格率は平均で68.9%。過去10年で最低の合格率だったそうです。 内訳は、受験者数は3295人、合格者が2269人で不合格者が1000人を超えたのです。
どうして今年の歯科医師国家試験の合格率が下がったのでしょう?歯科医師国家試験を受験する学生の質が下がっているわけではありません。歯科医師国家試験の問題が難しくなったわけでもありません。それでは一体何が原因だったのでしょう?
その謎を解くにはある合意があります。一昨年、当時の厚生労働大臣と文部科学大臣との間で確認書が交わされました。その内容とは、 ・歯学部定員については、各大学に対しさらなる一層の定員削減を要請する ・歯科医師国家試験の合格基準を引き上げる といったものだったのです。 すなわち、歯科医師が過剰になったために今後歯科医師になろうとする人たちを減らすよう、歯科医師を養成する大学に定員削減を求め、さらに、歯科医師国家試験の合格基準を引き上げるということが国策となったのです。
かつて歯科医師不足の時代がありました。多くの人が口の中の状態が芳しくなかった時代でもあったため、限られた歯科医院に来院する患者数は非常に多かったのです。朝8時から診療をはじめ、診療が終わったのが真夜中だったというような歯科医院が珍しくなかったのです。このような状況を打破するため、国は全国各地に歯科医師を養成する大学の設置を進め、現在全国に29校の大学歯学部、歯科大学があります。その結果、歯科医師不足は解消されたのですが、間も無く歯科医師供給過剰に至り、現在に至っていたのです。余りにも急に歯科医師要請大学を作りすぎた結果、歯科医師不足を補うよりも歯科医師過剰になってしまったのです。
これまで国は各大学歯学部、各歯科大学に対し定員削減を要請し、実際に削減されてきたのですが、それでも歯科医師過剰は収まりません。何せ全国に29校もの歯科医師要請大学があるのですから。そこで、国が打ち出した方針が国家試験の合格基準をあげるというものです。
国家試験の合格基準を上げるとは具体的にどうするのでしょう?歯科医師免許を与えるための試験というのは歯科医師としてふさわしい知識を確認するための試験です。そのため、あまりにも重箱の隅をつつくような問題を出すことはできない所があります。問題を変えることができない状況で合格基準を上げるとなると、合格とする点数を上げることになります。これまで60%の正解率で合格にしていたものを70%、75%に上げるということになります。 今回の歯科医師国家試験では、必ず正解しなくてはいけない問題を入れ、更に合格するための正解率を70%ぐらいまで上げたという話を伝え聞いています。
おそらくこの傾向はしばらく続くことでしょう。現状では、歯科医師の中で最も多いとされている所謂団塊の世代の層が後10年経つと70歳代に突入する。その結果、最も多い世代が歯科臨床の場から引退するか診療患者数が一気に減少することが確実視されています。歯科医師国家試験の合格基準を上げ、新規歯科医師数の数を減らしながら後10年経てば現役で最も多い歯科医師が現場から去る。そうなると、歯科医師過剰状態は一気に解決する時代となってくるかもしれません。
ちなみに、同じ時期に行われた医師国家試験の合格率は90.6%でした。歯科医師国家試験の合格率と比較すると、医師不足解消を目指した国策的な側面があるように思えてならなかった、歯医者そうさんでした。
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