歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2008年03月26日(水) 救急車、AED経費は誰が負担するのか?

先日、地元歯科医師会の先生から聞いた話ですが、ドイツ人の知人が突然、胸痛を訴え、救急病院に搬送されたのだそうです。原因は心筋梗塞だったそうですが、発症した間もなかったこと、救急病院への搬送がスムーズだったこと、それから、適切な処置を受けられたことから命に別状はなかったとのこと。
その後、何日かしてから救急病院を退院したのだそうですが、救急病院での医療費の支払いを終えてから、ふと疑問に感じたことがあったのだとか。それは、救急車の利用料金。ドイツでは救急車は利用料金を支払わなければならないのだそうで、日本でも当然の支払い義務が生じるはずだと信じ込んでいたのだとか。ところが、いつまで経っても支払いの催促がどこからもなく、疑問に感じ、知人に相談してきたというのです。日本では、救急車の利用は無料であることを伝えると、非常に驚いたのだそうです。

救急車の利用が有料であることを当然だと思っていた外国人であればそう感じても不思議ではありません。
むしろ、日本人であれば救急車は無料で使用できるものと当然のことのように感じている人がほとんどではないでしょうか?海外で日本人が救急車で搬送された場合、後日、救急車の利用料を請求され戸惑いを隠せなかったという話も何度か伝え聞いています。

昨今、軽度の症状であるにも関わらず救急車を出動要請する人が増え、本来救急車で救急病院へ搬送しなければいけないようなケースで救急車の出動が滞ったり、搬送が遅れてしまうようなケースが多いようです。これら背景には、救急車の利用が無料であるが故に、気軽に救急車の出動を要請したがる人が多いこともあるのではないかと思います。

現在の日本では救急車の利用は無料ではあるのですが、救急車が一度出動すれば、かなりの経費がかかることは容易に想像がつきます。救急車のガソリン代、管理費、内部の装置の購入費、メンテナンス料、救急隊員の出務費、救急隊員にかかる保険料等々、さまざまな経費がかかっているはずです。これらを利用者が支払わないということは誰かが代わりに負担しているということです。これらは全て公費、税金で賄われているのです。日本で税金を支払っている人が皆で負担をし、救急車の出動を支えているのです。

こういった目に見えない医療負担ですが、体外式自動除細動器(AED)についても同様です。
AEDとは、何らかの理由で突然心臓が停止し、倒れてしまった人に対し電気的ショックを心臓に与えて心臓が再び動くようにする器械のことです。元来、専門的知識と技術をもった医師が除細動器を使用していたのですが、法律の改正により、一般市民でも扱えるような除細動器が開発されたのです。これがAEDです。救命効果をあげています。

最近では市役所、公民館、学校、駅、デパート、ショッピングモールといった様々な公共の場所で設置が進んでいます。万が一、誰かが突然倒れた場合、救命するために非常に好ましいことではあると思います。
ちなみに、我が歯科医院でもこのAEDを導入しました。診療所の中で使用するのはもちろんのこと、万が一、近所で使用しなければならないような状況になった場合には、積極的に貸し出せるようにしようと考えています。

このAEDですが、決して安いものではありません。いくつかの機種がありますが、概ね定価は30万円前後といった代物です。高額であるためにリース契約でAEDを使用している場合もあるくらいです。
実は、AEDは機種による違いはありますが、買ってしまえばそれでおしまいというわけではありません。AEDには消耗品があるのです。それは電池であったり、胸に取り付けるパッドであったりします。これら消耗品もそれなりの値段がします。(ここの下部を参考)。

もし、連続してAEDを貸し出すような事態になった場合、その経費は誰が負担するか?本来ならAEDを使用して蘇生した人やその家族、関係者に請求すべきなのでしょう。
実際の運用はどうなっているのか?詳細はわかりませんが、我が歯科医院では、ケースバイケースで考えようということになりました。本来なら、我が歯科医院以外の人が使用した場合、使用を受けた人にAED使用料を請求してもいいのですが、所謂近所付き合いを考えると、AED使用料を請求できない場合もあるのではないかと考えたからです。

こういった状況を考えなければならないのも、公共の物、特に医療に関わるものが世間では無料であるという認識が強いことがあります。
決して、公共の物、医療が無料であることはありません。誰かがその経費を支えている事実。我々は多くの人の協力、努力による相互互恵によって生活している。誰もがそのことをもっと自覚しなければならないのではないかと感じた次第です。


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