2008年03月17日(月) |
血まみれ抜歯とモーツァルト |
歯科医院を来院する患者さんは多くの人が何らかの不安、緊張を抱えています。そういった患者さんのストレスを少しでも解消できないものか?そのような思いから患者さんの耳に聴こえるか聴こえない程度かの音量で心地よい音楽を流すことは決して無駄なことではないのではないかと思い、僕は診療中にBGMを流しています。
多くの医療機関ではBGMを流していますが、BGMはクラシック音楽が多いことでしょう。あまり耳障りがせずに気軽に聞き流すことができる音楽としてクラシック音楽を選択する医療機関が多いのではないかと思います。 うちの歯科医院の診療室でもBGMとして有線のクラシック音楽を流しています。クラシック音楽といっても多種多様な音楽があるのですが、いつも流しているのはモーツァルト。かつて僕はいろんな種類のクラシック音楽をBGMとして使用してきたのですが、患者さんの反応を見ているとどうもモーツァルトを流している時の状態が最も優れているように思うのです。 どうしてモーツァルトの音楽が好まれるか?理由ははっきりとはしませんが、愚考するに奇をてらったメロディーではなく誰もがなじみやすい旋律であること、曲の構成が単純であり、クラシック音楽になじみのない人でも慣れやすいこと、音の強弱が少ないことなどが挙げられるのではないかと思います。 モーツァルトの音楽がBGMとして適していると感じるのは僕だけではないようで、専門家の中にはモーツァルトの音楽は胎教にも良いと話す人もいるようです。中にはお酒の麹を育てるためにモーツァルトを流したり、中には昆虫を養殖する際にモーツァルトを流している所もあると聞きます。
そんなモーツァルトの音楽をBGMとして流しているうちの歯科医院ですが、先日、知人にそのことを話した際、知人がつぶやきました。
「抜歯で口の中が血まみれの時もモーツァルトが流れているわけですね。」
知人の指摘に思わずびっくりした歯医者そうさん。知人の指摘は全く間違いがありませんでした。確かに、血まみれ抜歯の最中にもモーツァルトは流れているのです。
おそらく患者さんは自らの口の中で行われていることに対して、あまり気がつかないことでしょう。僕も歯医者として処置に集中しているはずですし、周囲のスタッフの処置をサポートすることに専念しているはずです。 けれども、この状況を客観的に考えていれば、抜歯をして出血している状況でモーツァルトの音楽が平然と聞こえている状況は、結構異様なものではないか?天国の神様が僕の抜歯処置を見ていれば、そう感じても不思議ではないかもしれません。
元来、モーツァルトは自分の音楽を音楽愛好家のために作り、作曲し続けてきたわけですが、後年、自分の音楽が抜歯の際に使われていることを知ればどんな反応をするでしょう?実に興味のあるところです。自分の想定の範囲外での自分の音楽の使われ方に思わず苦笑しながらも、“まあいいか!”と思ってくれているのではないか?と信じたいです。患者さんの緊張を緩和させられるような音楽を作曲したモーツァルトであれば、きっと抜歯状況において自分の音楽が使われたとしても寛大な気持ちで許してくれるのではないか?
そんなことを感じながら、今日も患者さんの抜歯をする歯医者そうさんでした。
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