歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2008年03月12日(水) 思わず逃げ出したくなる気持ち

昨夜、仕事が終わってから何気なくテレビを見ていると、この番組が放送されていました。日本における心臓カテーテル治療における第一人者である延吉正清先生。現在、心臓カテーテル治療の手術数では日本一を誇る小倉記念病院の院長でもある延吉先生。

延吉先生は現在67歳。普通であれば引退してもおかしくない年齢なのですが、未だに第一線で活躍しているその訳は、一人でも多くの若い医者に自分の技術を学んでもらい、一人でも多くの患者さんを救って欲しいという一念からだとのこと。
番組では、全国から集まってきた心臓カテーテル治療の技術を学ぼうとする若い医師も照会され、日々研鑽に励んでいる様子が報じられていました。

番組の後半では、そんな研修医の一人が病院独自の試験を受けるまでの悪戦苦闘ぶりの一部が報じられていました。
経験の少ない研修医の患者さんを前にしての緊張ぶりが僕には非常によくわかりました。おそらく僕だけではないでしょう。プロとして患者さんを治療した経験のある人であれば誰しも感じたことのある緊張感。自分一人で患者さんの治療をしなくてはいけない。誰も助けてはくれない状況で信じるは己のみ。常に治療が上手くいけばいいのですが、現実は想定の範囲を超えたことが起こりうる医療の現場。思わず精神的に追い込まれ、自分の手が動かなくなる状況。どうしていいのか混乱してしまい、思わず逃げ出したくなる医療現場。

僕は循環器内科医のように直接命に関わる臓器を治療した経験はありませんが、誰もが親からもらった大切な臓器の一つである歯を削ったり、抜いたりしています。時には自分が思い描いていたような状態ではなく、思わず治療に時間がかかってしまうこともあるのです。どうしたらいいのか?瞬時の判断が求められるのですが、思わず焦るばかりで手が動かないこともあるのです。それでも患者さんに悟られず平然とした面持ちで切り抜けるか?どんな状況でも臨機応変に柔軟に対応し、時には治療を中断したり、延期したりする判断を下さなければいけません。これらは決して教科書には載っていないことで、誰かが教えてくれるというものでもありません。自分が一人で、現場で学ばなければならないもの。それ故に時には逃げ出したくなるのですね。

僕も未だに逃げ出したくなる時があります。いつになったら逃げ出したくなくなる境地になるのだろう?いつかは逃げ出さずしたくなる気持ちにならず、泰然自若として仕事に向き合いたい。そのようなことを感じた、歯医者そうさんでした。


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