歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2008年03月06日(木) 背中を押してもらいたい人々

昨日の昼休み、僕は地元歯科医師会へ所用があり出かけてきたのですが、車で移動中の車内で某ラジオ番組を聴いていました。その番組の中に健康相談があり、昨日は歯科がテーマだったわけです。歯医者として耳をダンボ状態にして相談を聞いていた歯医者そうさん。

相談には歯周病のこと、入れ歯のこと、ドライマウスのことなどの相談が寄せられて、東京方面の某大学病院の歯医者が答えていたのですが、どの相談者も歯医者で治療を受けていた経験がある人だったのです。かかりつけの歯医者がある相談者ばかりだったのです。ところが、そうした相談者がどうしてラジオに相談するのか僕には理解しにくいところがありました。

僕は基本的には歯や口の中の相談ごとは、受け付けていません。また、仮にラジオやテレビ番組で相談にのってくれと依頼があったとしても受け入れないつもりです。その理由は、単純です。自分が相談者に実際に会わず、口の中を診ることができないためです。
相談者からの話を全く信用しないわけではありませんが、相談者の話にはある種の偏り、思い込みがある場合が多いのです。実際に相談者が思っていることと、実際に口の中で起こっていることにずれが生じている場合が多いのです。相談者の相談に正確に答えようとすれば、相談者の口の中を診てからでないと僕はできません。
誤解のないように言っておきますが、相談者からの相談に対していくつかの可能性を話したり指摘をすることは可能です。当たり障りの無い話をすることは可能なのですが、果たしてそれが相談者のためになっているのか僕は疑問です。同じ相談にのるなら、相談者の悩みに正確に答えたいのが僕の信条です。
ラジオやテレビの場合、相談事は患者さんの感じたこと、悩んでいることを話すことしか情報がありません。患者さんの相談話だけで正確なアドバイスができるのか?僕は疑問なのです。

昨日の某ラジオ番組でも回答者である歯医者は、相談者の本当に知りたいこと、答えて欲しいことを答えることができないでいました。言葉を選んで答えていたのが印象的でした。これは仕方のないことだろうなあと思いましたね。

ところで、相談を聞いていて僕が感じたことがあります。それは、どの相談者も悩む前にどうして歯医者に行かないのだろう?ということです。
ラジオで相談したい気持ちもわからなくはありませんが、ラジオの媒体で専門家の意見を聞く暇があったら、かかりつけの歯医者に相談した方が解決が早いのではないかと感じたのです。

ラジオ番組を聴き終えてからしばらく愚考してみました。
もしかしたら、相談者自身、一刻も早く歯医者に行かなくてはならないということは、重々承知なのではないかと。歯医者へ行きたいが、踏ん切りがつかない。そんな心境ではないかと。自分が歯医者に行くために、背中を押してもらいたい、歯医者へ行くきっかけをつくるために、ラジオの相談番組に相談し、全くの第三者である専門家の声をあてにしたいのではないか?

歯医者というのはまだまだ敷居が高い存在なのでしょう。少しでも日常耳にし、親しみのあるラジオ番組で出演している歯医者であれば気軽に相談し、歯医者へ受診できるように後押しをしてくれる。そんな期待が相談者の心境が見え隠れしていたように思いました。

そのような気持ちわからなくはありません。僕は歯医者ですが、口や歯以外のことで健康問題が生じた場合、直ぐに医者にかかるまえにいろいろと調べますが、調べれば調べるほど慎重になってしまう時があります。それでも、悩んでいる暇があれば医者に行こうと思い、実際に診察を受けているわけですが、世の中には医者や歯医者に行かなくてはいけない必要性は感じながら、どうしても決断できずにずるずるといてしまう人がいるかもしれません。
歯医者へ行く決心を促し、行動に移すためにラジオ番組を利用する。昨日のラジオ番組の相談者にはそうした意図を持った相談者が多かったような気がしました。


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