2008年03月05日(水) |
品格の無い”後期高齢者” |
前期高齢者、後期高齢者という言葉をご存知でしょうか?元来、これらは老年学という学問で定義された言葉なのだそうで、前期高齢者は65歳以上75歳未満の高齢者を、後期高齢者75歳以上の高齢者のことを指す言葉です。 最近、前期高齢者、後期高齢者という言葉が世間一般に浸透しつつあります。その理由は、おそらくこの4月からの健康保険制度の改正にあることは間違いありません。
この4月より後期高齢者の医療保険制度が大きく変わります。75歳以上(一定の障害のある人の場合は65歳以上)の高齢者の医療保険が全く別枠となるのです。基本的に全ての75歳以上の高齢者が掛け金を払わないといけない医療保険制度となるのです。昨今、医療費の増大に伴い医療費の財源確保が課題となっているわけですが、これまで負担をする必要がなかった扶養家族であった高齢者も保険料を自己負担せざるをえなくなったのです。保険者は都道府県単位の広域連合で、保険料もこの広域連合へ支払うことになります。
今後、4月が近づくに従って後期高齢者保険制度に関することはいろいろと取沙汰されるでしょう。今回の日記では後期高齢者制度についてはこれ以上取り上げませんが、かねてから僕はこの後期高齢者という言葉の響きが気に入りません。どうして高齢者を後期や前期にわけるのだろうか?いくら老年学、そして、現在の保険制度上の分け方とはいえ、単純に年齢によって高齢者を前期、後期を分けるとは如何なものかと思うのです。 高齢者を単純に年齢だけで分けてしまうことに僕は不満です。高齢者に対して非常に冷たく扱っているように思えないのです。世の中にはいろんな高齢者がいますが、少なくとも人生の先輩として若い世代を引っ張り、支えてきた人たちに何らかの敬意を払うのは社会の礼儀ではないかと思うのですが、後期高齢者、前期高齢者という言葉にはそうした人生の先輩に対する配慮が全く感じられないのです。
日本には高齢者が一定の年齢に達した時、長寿を祝う賀寿の習慣があります。数え年で61歳の人は還暦、70歳は古希、77歳は喜寿、80歳の人は傘寿、88歳の人は米寿、90歳の人は卒寿、99歳の人は白寿等々です。 僕はこの賀寿を表す言葉のどれもが非常に美しい言葉の響き、温かみがあるように思えてなりません。一昔前は長寿であることが珍しい時代であったこともあり、高齢に達した人への称賛、賛辞の意味がこれら言葉に含まれていますし、高齢者に対し社会全体として敬う気持ちが溢れているように感じます。 こういった賀寿の言葉に対し、後期高齢者、前期高齢者という言葉にはどうしてお粗末で、事務的、機械的なものに感じざるをえません。人生の先輩として若い世代を支えてきた高齢者を表現する言葉には、昨年流行した言葉を借りれば、もっと品格のある言葉があってしかるべきだと思うのですが、高齢者を後期と前期に分けて表現する今の言葉には全く品格がありません。僕は前期高齢者、後期高齢者という言葉が好きになれずにいます。
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