歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2008年03月03日(月) 痛くない歯の治療を見て感じたこと

最近、テレビ番組を見ていると医療に関する最新知識、技術を特集したテレビ番組が結構放送されています。これら番組の中には歯科治療に関するものもあり、職業柄、僕も思わず見入ってしまいます。

先週末、この番組でも歯科治療の最新技術に関するものがいくつも取り上げられていました。痛くないむし歯の治療法、削らないむし歯の治療法として3−MixMP法やヒールオゾン療法などが紹介されていました。
以前、3−MixMP法については、こちらこちらでも取り上げ、特にマスコミや関係者が強調していなかった問題点について書きました。ヒールオゾン療法については後日取り上げたいとは思うのですが、これら痛くない治療法をマスコミで取り上げられること自体は、内容が正確であれば歯科関係者にとって有難いとは思います。何かと敬遠されがちな歯科、歯医者に対するイメージを少しでも改善し、多くの人たちが歯に関心を持ってもらい、積極的に自らの歯の健康維持に努め、歯医者を上手に利用できるなら、それに越したことはないと思います。
その反面、僕はこれら治療法が取り上げられる時にどうしても疑問に感じることがあります。それは、どうしてむし歯になったのかを冷静に振り返っていないのではないか?という疑問です。

科学技術は日進月歩で発達しています。歯科の分野においてもいろんな材料や歯科治療の技術革新が行われています。けれども、どうしてむし歯が起こるかということを考えると、これら治療技術はあくまでもむし歯で侵された歯を応急的に治療しているに過ぎないのです。対症療法でしかないのです。

火事が発生すれば、まずは火消しを行います。火事がこれ以上広がらないように延焼を防止するために放水が行われます。場合によっては化学的な消火や江戸時代の火消しがおこなっていたように燃え移らないように一部の建物を壊したりすることもあるかもしれません。まずは火を消すことです。
消防では、火が完全に鎮火してから必ず火元と何が火災の原因だったか検証します。寝たばこが原因だったのか、漏電だったのか、誰かの放火による不審火だったのか等々、今後の防火対策を考えるためにも火事の原因を調べるものです。
むし歯の治療は火事を消す消火活動のようなものです。むし歯の治療は、消火活動が火を消すが如く、必要不可欠なことですが、むし歯の治療の後、真の原因を見つけ、解決しないかぎりむし歯は再発する可能性が高いのです。

歯は天然の歯が最も強度があります。むし歯を治療した歯はどうしても天然の歯よりは弱くなります。むし歯治療はかなり進化しているものの、どうしても天然の歯に勝る材料は開発されていません。現状から考えれば、むし歯の治療痕は一種の継ぎ接ぎのようなものなのです。むし歯の原因が解決されなければ、むし歯を治療痕がある歯は天然の歯よりもむし歯になりやすいのです。むし歯になるリスクが天然の歯よりも高いのです。

結局のところ、何が言いたいかといいますと、むし歯を治療する際、単に痛くない治療を追及するだけでなく、今後むし歯にならないような対策、環境作りが大切だということです。それは、歯磨きの仕方を改善したり、食生活を含めた生活全般を見直したりすることなのです。
人というもの、喉元過ぎれば熱さ忘れるといいますが、むし歯を治療すればそれで終わりと考えがちです。ともするとむし歯の痛くない治療法が注目されるのも無理のない話しではありますが、いくら痛くない治療法が開発されても、真のむし歯の原因を解決しなければ、せっかくの最新のむし歯治療法も意味がありません。

読者の皆さんにおかれましては、もしむし歯で悩んだことがあるようでしたら、今後むし歯にならないことをいつも念頭に考え、歯磨きを行い、定期的に専門家のチェックを受け、積極的に歯の健康維持に努めて欲しいと思います。


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