人間の体の中には50兆とも60兆とも言われる数の細胞があると言われていますが、これら細胞の多くは常に新陳代謝があります。すなわち、生まれてくる細胞があれば死んでいく細胞もあるもの。各細胞は常に周囲の環境に適応しながら協調しあい、過不足なく一定の秩序を保っているものなのです。人間は同じ姿、形をしていても、人間を形作っている細胞は常に生まれ変わっているということです。
ところが、突如としてこの均衡を打ち破る細胞が出現することがあります。周囲の細胞とは無関係に増殖し続け、塊となるのです。こうした塊のことを腫瘍、すなわち、ガンと言います。
ガンの中には発育が緩慢であったり、一定の大きさに達するとそれ以上大きくならないものと活発に増殖し続け、周囲組織に浸潤し、遠隔転移するものがあります。前者を良性腫瘍、後者を悪性腫瘍と呼ぶのです。同じガンでも人間にとって厄介なのは悪性腫瘍で、命の危険にさらされる病気の一つです。現在、日本人の死亡原因の第一位が悪性新生物、すなわち、悪性腫瘍です。
人間の体にはどんな場所でもガンになる可能性があるわけですが、歯の組織由来のガンというものも存在します。専門的には歯原性腫瘍と呼ばれます。歯原性腫瘍はいくつかあるのですが、歯の形がいびつであったり、歯が多く集まったような歯原性腫瘍というものがあります。
(出典:学建書院 小歯科カラーアトラス 口腔外科学(下)より)
これらは歯牙種と呼ばれる腫瘍です。上の写真のように下の奥歯や上の前歯に発生します。何だか歯の出来損ないのような形をしたり、細かい小さな歯の塊が多数集まっているようなものがわかるかと思います。歯の異常増殖である腫瘍が歯牙種であると言えるでしょう。
原因は歯の発生異常によるものだとされていますが、患者は比較的若い人が多く、歯が生えてこないためにレントゲン写真を撮影した際に見つかるようなことが多いようです。
この歯牙種は良性腫瘍ですので、転移の心配はありません。ですから処置としては、外科的に全て摘出する方法が取られます。一種の抜歯のようなことを行うことにより治癒します。
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