昨夜、診療が終わり自宅に戻ると一足先に診療を終えていた親父がこの番組を見ておりました。 これまで何回も見ていた番組ではありましたが、今回は歯茎からの出血が思わぬ病気のサインであることを取り上げたものでした。
一つは、50歳代後半の男性のケース。この男性は水道修理会社に勤務し、丁寧な仕事ぶりが評判の男性ではあったが、自分の体のことは無頓着。お腹は出ており、医者から注意されているにも関わらず禁煙できないまま。10年前から歯磨き時に歯茎から出血していたにも関わらず放置いたのです。 ある日、自分の娘から口臭を指摘され、やっと歯磨きを毎食後行うようになっていたが、仕事中、突然、激しい胸痛に襲われ、そのまま病院に救急搬送されるも時遅く、帰らぬ人となった。そんな内容でした。
死因は心筋梗塞だったのですが、心筋梗塞に侵された心臓を検査してみると、詰まった心臓血管からは歯周病菌が検出されたのです。 最近、重度の歯周病を患っている人は心筋梗塞になる確率が高くなるという専門家による報告が行われたとのこと。番組では、血液の中にある血小板という細胞の中に歯周病菌が入り込み、動脈硬化をおこしていた心臓の冠状動脈に付着し、心筋梗塞を起した可能性が高いことが言われていました。
もう一つが、同じく50歳代後半の女性のケース。友人とのランチが趣味という専業主婦の女性が気になっていたことは、お腹周りと歯磨き時の歯肉からの出血でした。何とか体に良いことをしないといけないと思い、一念発起してフラダンスを習い始めたのですが、それから間も無くして頻繁に頻尿、咽喉の渇きを覚えるようになり、階段を登る際にはこむら返りも起きるようになった。そして、フラダンスのレッスン中、この女性は全身の倦怠感を覚え、倒れ、病院に搬送。そこでこの女性は糖尿病が進行していたことを医師から告げられ、驚いたというものでした。
この女性は、食べ歩きが好きな一方、運動不足から軽度の糖尿病だったのですが、これが体に良いとされているフラダンスをすることにより急速に悪化、緊急入院をしなければいけないはめになってしまった。その理由は、歯周病だったというのです。
最近の研究では、歯周病が進行してできた歯茎の腫れ、すなわち歯周ポケットにある種の歯周病菌が発生するとこの歯周病菌が出す毒素に血液中の白血球がある種の酵素を出すのですが、この酵素が血糖を下げるインスリンの働きを妨げ、結果として血糖を上げてしまうことがわかってきたのです。その結果、重度の歯周病によって糖尿病が悪化し、糖尿病が悪化することで更に歯周病も悪化するという、歯周病と糖尿病の悪化スパイラルが起こる可能性が高いことが指摘されていたのです。
この番組の中でも歯周病の専門家が言っていましたし、僕もこの日記で何度も取り上げてきたことですが、今や国民の8割以上が歯周病であることが厚生労働省が全国的に行う歯科疾患実態調査によって明らかにされています。国民の8割以上の罹患率ですから、大問題のはずなのですが、国民の8割が歯周病であるという事実を考えると、ほとんどの人が歯周病であることを自覚せず、歯周病を治そうとしていない現実が浮かび上がります。
歯周病は歯肉炎と呼ばれる軽度のものであれば、丁寧な歯磨きにより容易に治癒するものですが、ある程度進行してしまうと歯磨きだけでは完治せず、歯周病が進行し、歯を失ったり、上記のように全身の病気の悪化に一役も二役もかったりするようになるのです。
このようなことにならないためには、普段からかかりつけ歯科医を決めておき、歯周病の進行程度に応じて定期的に歯磨きチェックや歯磨き指導を受け、さらに専門家による歯周ポケットの清掃、歯石除去などを行わないといけません。国民の8割が歯周病である状況が改善しない背景には、まだまだ歯周病の本当の恐ろしさが知られていないこともあるでしょうが、それ以上に国民に定期的に歯医者に通う習慣が無いことが関係していると思います。
この番組で取り上げられていることに過度に反応する必要はないとは思いますが、決してうそではありません。一般の人からすればかなりショッキングなことではあるでしょうが、歯周病が死に至る病の進行を助長する事実が次々明らかになっていることは確かです。 一人でも多くの人がかかりつけ歯科医をみつけ、定期的に歯医者に通い、専門家によるケアを受け、歯周病の治療を受けて欲しいと思います。
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