2008年02月05日(火) |
口の中から見つける虐待 |
昨日、インターネット上でニュースを見ているとこのようなニュースがありました。
三重県歯科医師会と同県がネグレクト(育児放棄)などの虐待を受けている児童に虫歯が多いことなどを歯科医たちに伝え、検診時の対応マニュアルなどを配布したところ、歯科医の関心が高まって実際に通報するケースが増えてきたとのこと。同会と県がこのほど津市で開いた「日本子ども虐待防止学会」で報告したそうです。 同会と県が05年度に行った調査によると、虐待を受け保護が必要な児童の虫歯経験率は通常の1.5倍に上る一方、処置率は約4分の1と極めて低く、06年3月に同会の会員(約860人)に実施したアンケートでは、歯科医師の約4割が「検診でネグレクトの疑いを持ったことがある」としながら、市町や児童相談所に連絡した例はなかったとのこと。 このためこうした場合の対応マニュアルなどを記したパンフレットを作製し配布。その結果、07年5月の2回目のアンケートでは「ネグレクトという言葉を知っている」と回答した歯科医が87.9%(前回63.3%)に上り「虐待を発見した時にどこに通報すればよいか知っている」と答えた歯科医も57.3%(前回45.9%)に上昇。実際に通報した例も3件出てきたそうなのです。 これと別に同県内の学校歯科医と養護教諭を対象にした07年10月の調査では「検診で虐待を疑い、学校に指摘した」と答えた学校歯科医は28件に上ったそうで、同会は07年度から、県内の児童相談所のうち2カ所で年1回、要保護児童の無料検診もしているそうで、同会幹部の一人は「児童虐待の抑止力を高め、子育てを支援したい」と話しているとのこと。
僕も地元小学校の学校歯科医として、そして、他の小学校への学校検診を手伝いに行くようになってから10年以上経過していますが、年々児童、生徒のむし歯の数は減少しています。この結果は様々な調査ではっきりと現れており、僕が検診をしていてもそのことを感じます。それ故、むし歯がある児童、生徒、特に、むし歯がたくさんあり、放置されたままの児童、生徒は検診をする歯医者の目から見れば、非常に目立つのです。
学校検診は学校保健法の規定により毎年6月30日までに必ず行わないといけない検診ですから、1年に1度は必ず定期的に児童、生徒たちの口の中を診ることになります。地元小学校の学校歯科医として毎年児童、生徒たちの口の中を見ていれば、彼ら彼女らの口の中の変化を定期的に見ることにもなるわけですが、その際、多くのむし歯がありながら放置されたままの状態であれば、直ぐにわかってしまいます。 児童、生徒たちの口の中の管理は、親の子供たちへの関心度と比例します。児童、生徒の口の中の状態が悪いということは、家庭の中に何らかの問題があるとみて間違いはありません。これまでも僕は歯が悪いまま放置されている児童、生徒は個別に検診票にチェックをしたり、担任の先生や養護の先生に名前を挙げて対処するようにお願いをしていたわけですが、担任の先生や養護の先生も歯の悪い児童、生徒には関心が高いようで、何とか歯の治療に歯医者へ通院してもらうよう説得を試みているようです。 残念ながら、このような児童、生徒の保護者たる親は何回も説得して歯医者へ通わせることをしないことが多いようで、中には児童、生徒たちに虐待をしているようなケースがあったようです。
外部の者が子供の親からの虐待を防止するというのは、親権の問題があり非常に難しいところがあります。虐待を繰り返している親は子供に虐待をしていることを周囲に言いませんし、その意識も無いことが多い。一方、虐待を受けている子供は親が全てであるわけですから、一方的に虐待を受け続け、精神的にも肉体的にも傷を負うばかり。 明らかに虐待を受けているとわかるようなケースでは公権力を持って親権を抑える必要があると思うのですが、そのためにも虐待を受けている証拠、兆候が周囲で把握できないと対処できないのも事実。
幸い、歯の検診というのは保育園や幼稚園に入園すれば、必ず受けるもの。虐待の兆候が歯に現れることが多いのであれば、検診医の果たす役割は極めて重要だと言えます。最近では、虐待の兆候が見られる子供を診た歯科医が通報をする義務があります。例え、誤報であったとしても罪には問われない。それくらい、歯科医が子供の虐待に果たす役割が大切だということなのです。
歯医者として、歯の検診が子供虐待の防止につながる意味をこれまで以上に肝に銘じておこうと思います。
|