2008年02月02日(土) |
患者と共に年を重ねる |
先日、僕の出身歯科大学関係の先輩、後輩と話をする機会がありました。いろいろと話をしたのですが、ある後輩の歯医者が興味深いことを言っていました。
「僕は自分の歯科医院を開業して3年になるのですけど、義歯を作るケースが少ないですよ。一ヶ月に一回あればいいくらいです。開業する前はもっと多いものかと思っていたのですが、意外でしたよ。」
この手の話はよく耳にします。都市部で患者さんが比較的若い人が多い地区で開業している歯科医院では、歯周病やむし歯で多数の歯を失った人が少ないのです。その結果、多数の歯を失った患者さんに対して行う義歯を作るケースがないのです。 その一方、農村部で高齢者の多い地区で開業している歯科医院では、大半の患者さんが義歯を使用していることが多いものです。義歯の調整や修理、そして、新しく義歯を作るようなケースが毎日あります。 今の若い世代の歯医者は、都市部で歯科医院を開業する傾向が強いところがあります。今でも歯科医院が過剰な地区であったとしても都市部に対する憧れ、生活のしやすさ、利便性などの理由があるとは思いますが、若い世代の人が多く、口の中に関心を持っている人が多いところでは、自ずと多数の歯を失い、義歯を求める患者さんは限られてくるのでしょう。都市部で開業した歯医者は、義歯を作るケースが限られてくるのではないか? そのような話をしていると、同席していた先輩のY先生が興味深いことを言いました。
「確かに都市部では義歯を作るケースは限られるところがあるけど、それだけではないと思うよ。なぜなら、若い世代の歯医者の下にやってくる患者さんは若い世代の人が多いという側面があるのじゃないかな?かつての私もそうだったよ。開業した時は高齢の人は少なかった。ところが、開業して何十年も経過するとね、何人もの患者さんがかかりつけ歯医者として通ってきてくれる。ということは、患者さん自身も年齢を重ねてくるということなんだよ。年を重ねるということは、歯を失う機会も増えてくる。本当はどんなに年を重ねても歯を失って欲しくないんだけど、不幸にして多数の歯を失う患者さんもいるものなんだよ。そうなれば、義歯を作ることになるだろう?歯医者もね、患者さんとともに年を重ねるんだよ。年を重ねれば義歯のケースが自ずと増える。義歯を作ったことが少ないと言うことは、まだ歯医者自身も若いのではないか?そう私は考えるね。」
ベテランの歯医者Y先生の言うことは説得力があります。患者さんが年を重ねるとともに自分も年を重ねる。何人もの患者さんに長年慕われ、信頼されているY先生ならではの意見だと感じました。僕自身、今から何十年も後に今の患者さんが来院し続け、義歯を作るような境遇になるかどうかは定かではありませんが、一つの目標としたい。そのような気持ちを強くした、歯医者そうさんでした。
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