2007年12月18日(火) |
原油価格の高騰に戦々恐々 |
歯科医院は患者さんの口や歯を治療する医療機関ではありますが、患者さん以外にも出入りしている人たちがいるものです。歯科医院に材料や器具の注文を受け、届けてくれる歯科材料店の担当者も歯科医院に出入りする人たちの一人です。 うちの歯科医院にも歯科材料店の担当者が週に2回出入りしています。あらかじめリストアップしておいた歯科材材料や器具の注文を出したり、器具のメンテナンス、新製品の情報、PRなどをしてくれるわけですが、僕も時間の許す限りそんな担当者と出会い、話をするようにしています。せっかく出向いてくれているわけですから、全く顔を会わせずに帰って貰うのは失礼ではないかと思うからです。診療の合間に来てくれますので、長時間話をするわけにはいけないのですが、短時間でも担当者と話をしているといろいろと興味深いことを話しすることができます。
先日、歯科材料店の担当者Y君と話をしていると、原油価格の高騰について話がでました。Y君曰く
「原油価格の高騰で最も影響を受けているのは、ガソリン代ですね。僕らの仕事は先生方から注文を請けた歯科材料や製品を届けることですが、毎日多くの歯科医院を多くの歯科材料、製品などを持っていくわけですから、どうしても車が欠かせません。車の移動をせざるをえないのですが、ガソリン代が急速に上がると経費がバカにならないのです。なるべく安いガソリンスタンド、割引を実施している曜日や時間帯を見は駆りながら燃費を稼ぐようにしているつもりですが、これほど急速にガソリン代があがると、節約も限界に近づいているように思います。」
自動車で外回り、営業の仕事をしている方なら誰もがY君と同じような悩みを抱えていることでしょう。また、運輸、運送関係の仕事をされている方などは原油価格の高騰はもはや死活問題と言っても差し支えないくらい切実な問題になっています。コストダウンの努力をしても追いつかない原油価格の高騰に悲鳴をあげている企業、会社は多々あるはずです。
この原油価格の高騰、歯科業界全体ではどうかといいますと、歯科医院のレベルでは直接的な影響はまだ出ていないのですが、歯科関係の製造メーカーレベルではかなりの影響が出ているようです。中でも石油価格の高騰に伴う原材料のコスト高により、道具類や石膏などの製造コスト上昇が大きく、どうも販売価格の上昇につながってくるようです。 このことに先行してというわけでもありませんが、歯科医院レベルで大きな影響を受けているのが歯科金属です。特に、金やパラジウムといった歯科用貴金属はほとんど全てが海外からの輸入、海外依存度が大変高いのですが、価格が高騰しています。ところが、実際に歯科用金属を用いた差し歯、被せ歯の価格はといいますと、保険診療では価格が1年以上据え置きとなっています。原材料が高騰しているにも関わらず価格が据え置かれている。これは歯科医院の経営にとって非常につらい状態です。 ほとんどの歯科医院は保険診療を行っていますが、基本的に保険診療による報酬は2年に1度決められと、以降2年間はそのままです。物価の変動に対応した診療報酬設定ができなくなっています。これが果たして良いことなのかどうかわかりませんが、少なくとも昨今の原油価格の高騰に伴う物価の上昇にうまく対処できない医療機関が多いのは事実です。 原油価格の高騰によりメーカーの値上げが提示されているにも関わらず販売価格の値上げができない、現在の小売販売店と同じジレンマを抱えているのです。
昨今、医師不足による医療機関の廃止がいろいろと報道されていますが、原油高騰による医療機関への影響は医療機関の経営体力を疲弊させ、いくつかの医療機関が倒産、廃止されることにつながります。そうなれば、現在の医療制度そのものが崩壊の危機に瀕することになりかねません。 原油価格の高騰を何とか乗り越える手立てはないものか?間も無く歯科医院の経営にも大きな影響が出てくることは確実な原油価格の高騰は、僕のような零細歯医者にとっても大きな悩みの種の一つです。
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